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……簡潔にまとめた




「殿下ッ!」


 真っ赤に染まった床を見たファライは思わず叫び声を上げ、部屋の主の安否を確認しようと見回す。

 しかし、中は誰もいない。

 あるのは、部屋を彩る様々な豪華家具。

 まるで蛻の殻。


「……そんな…………殿下……」


 カタストロフの死体は部屋にない。

 だがこの血の量……! と不吉な想像が頭をよぎり、ファライの足は蹌踉めいてしまう。


「……どうすれば。……そ、そうだ……知らせないと……! 応援、応援を呼ぼう!」


 ファライはうわ言のようにつぶやきながら、赤く濡れた床からフラフラと後ずさり、振り返って出ようとした瞬間――――両目を突如背後から伸びてきた手に覆われた。


「うお!?」

「――だぁーれだぁ?」


 訳わからない状況に驚くファライと、いたずらっぽく尋ねる背後の声。……うーん、端から見ると面白いわね。


「く、曲者ッ!? 潜伏していたか……!? 丁度いい、殿下のこと、吐いてもら……う…………ぞ……? …………ん? ……殿下?」


 ファライは扉を切り裂いた剣をそのまま握り直し、背後の敵へ斬りかかろうとしたが、途中で聞き慣れた声と気づき、下ろした。


「おう。俺知らなかったな。まさかファライが俺のこと知りたすぎて、本人に吐いてほしいなんて――。で、何が知りたい?」


 正解を口にした友人に、カタストロフはからかうように笑いながら手を放した。


「…………殿下、ご無事でしたか」


 ホッとしたような、怒っているような、恥ずかしいような――様々な感情が混じり合った表情の騎士団長は、最終的に簡潔にまとめた。


「最初の質問がそれ? お前……相変わらず面白くない奴だな」

「……殿下を楽しませたくてやっている訳ではありません。……というか今更気づいたのですが……これ……もしかして……」


 赤く染まった床を指差し、疑いの目をカタストロフに向ける若い騎士団長。その額には薄っすらと血管が浮かび上がっている。


「遅い。本当に今更ね」

「……殿下ァアア…………っ!」


 翻弄されていた騎士の声は――大きくこだましていた。




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