表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/59

全部教えて下さい(ニコッ




「……やはり見間違いではありません。どうしたんですか、ランツェアイル様、なぜこんなところに……? その服、一体……? 殿下にまた招待されたんですか? でもそういう話は一切聞いて――」


 私だとわかった途端、矢継ぎ早に言葉を吐き出すファライに、私は淡々と彼を制し――


「……ファライ」

「はい、何でしょう?」

「……質問の前にまずは兜を脱ぎなさい。本当にファライかどうかもよくわかりませんわ」

「――あ、これはとんだ失礼を。申し訳ありません」


 指摘されて、ファライは慌てて兜を脱いだ。

 その下に――私が知っている人良さそうな顔はニコリと笑みを浮かべていて、解放された金色の髪は夕焼けに照らされてキラキラと輝く。


 うん、ファライだ、間違いなく。

 顔を確認できて、ようやく安心した。


「……それにしても、すごい質問攻めでしたわね」

「……あ、あはは。……申し訳ありません。今になって反省はしています。……しかし、当然の反応だと思います。だって、ランツェアイル様……その服はなんなんですか」


 ファライは私の格好に視線を向け、若干苦笑した。


「あ、これ? 似合うでしょ?」

「……そういうことではありません。私がお尋ねしているのは、なぜ平民のような格好を――ということです。……まさかとは思いますが、殿下のいつものおフザケ? ……いい? ランツェアイル様、別に付き合わなくていいですよ? 誰も困りません。困るのは殿下だけです」


 くるりと一回転し、村娘の格好でお茶目に振る舞う私に、ポルソの騎士団長は盛大に苦笑を浮かべる。

 そして警戒するように周囲をうかがい、声を潜めてヒソヒソと私に耳打ちしてきた。


「大丈夫、カタストロフ殿下は関係ありませんわ……今のところね」

「……すんごく嫌ぁな予感がしますね。その言葉を聞いただけで」


 苦虫を噛み潰したような表情になったファライに、私は真似するように先の彼と同じく声を潜めて尋ねる。


「……ファライは例の件について、何か聞かされてませんこと?」

「……例の件ってなんなんですか。そんなさも暗黙の了解のように尋ねられましても。……ランツェアイル様、殿下と友人になって以来、悪い癖ウツってません?」


 あら? この反応……本当に知らないのね。

 てっきりポルソ上層部の人間は私の冤罪誘拐事件について、かなり情報を得ていると思っていたが、違ったようだ。


 もちろんファライが知らされていない、もしくは嘘をついている可能性もあるけど……。表情と反応を見る限り、嘘はないかな。


「……騎士団長様は、ポルソ王都の犯罪組織に詳しいですの?」

「ヘ? ……なんでそんなことを? 詳しくは……まぁ、大体は知っているですかね」

「では、アジトの場所、全部教えて下さい」

「……はい? ……聞き間違い……ですよね?」

「ううん? できれば王都以外にも、ポルソ国内有名な犯罪組織のアジト、その場所を教えて頂けると嬉しいですわ。……あの、どうされました?」

「……頭が痛い」


 ファライは頭を抱え、私を見つめながらゆっくりと口を開き、


「ランツェアイル様があのバカみたいなことを言い出した。どうしよう」


 絶望に満ちた顔で呟いた。……失礼な、どういう意味よ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ