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見覚えのある兜




「……失敗、かな」


 大勢の人が行き交う雑踏の中、私はポツリと呟いた。

 ポルソ王都に来たのはいいけど、よくよく考えてみたら今の私――ティエラ・ド・ランツェアイルは公式では行方不明ということになっている。つまり失踪中。


 騎士団が私の家出を誘拐だと結論づけたことも、ごく一部の調査に関わる人間しか知らない。

 更に言えば、現状で私の行方不明事件の最大容疑者は――ポルソの大貴族、四大公爵のディカルラ襲撃事件の犯人と関連があり、もしくは同じ組織の人間かもしれない。


 だけど、ポルソへ向かう途中、情報収集も兼ねて旅行者や行商人に聞いた話の中に、私の名前は一切出ていなかった。


 もちろん自国と同じ対応をしただけかもしれない。

 公爵令嬢がさらわれ、犯人グループがポルソ国内にあるなんて――ポルソからすれば双方の了承を得ずに発表はできないし、そもそも誘拐した犯人組織が自国にある事自体が軽々しく民に言えない。


 言ってしまえば、それはポルソの治安維持に問題ありだと両国の民に公言しているようなもの。

 その上、外交問題にも発展しかねない。

 現在、ポルソという国の立場から見れば、ランツェアイル公爵令嬢は公に現れてはいけない人物になっている。


 でも、そこは別に問題にはならない。

 私も、これ以上の大事にはなって欲しくないから極秘に潜入した。


 問題は、矛盾が生じないよう、事態を解決する気でポルソに乗り込んだまではいいが、肝心の組織に関する手がかりが無い。


 どこの犯罪者組織か、規模はどのくらいか、アジトはどこなのかも、全然わからない。


 虱潰しに探していけばいつかは見つかるだろうけれど、生憎お忍び状態の私に一番足りないのは時間。


 平民を装い、変装はしているけど、手がかりがないとどうしようもなく、私は途方に暮れていた。


 もう一度、酒場に行ってみる?

 いや、あれだけ聞き込みをしても何一つ有力な情報を得られなかったのだ、これ以上は望めないだろう。


 スラム街に突入し強引に犯罪者を捕まえて吐かせるのもありと言えばありだけど……できれば私がポルソにいた痕跡は残したくない。


 他にいい手はない? と、スラム街の付近まで来て、考え込んでいると――


「お嬢さん、そこは行かないほうがいい。危険なスラム街だから――え? あれ? 貴女は――確か――」


 不意に呼び止められ、振り向くと、そこに見覚えのある兜――ではなくてぇ! ――騎士が立っていた。


「――ランツェアイル、様?」

「――ファライ?」




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