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幕間7 最後に笑うのは英雄か、愚者か




「どういうことだぁ……?」


 ポルソ四大公爵の一人、ディカルラは激しく混乱していた。


 雇った暗殺者は、調査を命じただけなのに勝手に誘拐や殺しまで発展した上に失敗。更に計画と無関係な国で捕まっている。

 拷問され、背後にいるのが自分だと吐かされたら色々とまずいから、その前に先手を打とうと動いたのに。


 ――どういうことか、事態はまた自分に都合悪い方へ。


 ディカルラ大公は思わず頭をかきむしる。

 初老になり、もはや白髪のほうが多い頭を、感情的になって久しぶりにかきむしる。


 せっかくうまくいきそうな感じだったのに。


 関係が明るみに出る前に暗殺者の残党に自分を襲わせ、同じく被害者を装い無関係の一点張りを狙っていた。

 襲われるところを第三者にも目撃されていて、偽装工作、アリバイ、全ては計画通りに進んでいると喜んでいた矢先に――公爵令嬢ティエラの行方不明事件。

 しかも、犯人は自分が雇っていた暗殺者の組織と判明。


 どうしてこうも、想定外の余計なことが次々に起こる?


 全く謎だ。わからぬ。

 国内の世論もうまく操作できて、自分は容疑者と疑われなくなりそうになっていたのに。

 バレるとまずいから、本気で襲わせたのに。刺されて、危うく死にかけたのに!


 何より、アイツラにはほとぼりが冷めるまで、ランツェアイル令嬢には手を出すなと再三に厳重警告しておいた。なのに――ッ!

 一体組織内の誰が、命令を無視して行動したんだ。


 あぁ……! クソ、糞ッ! ……考えてもわからん!!!

 病室の上で、頭をひたすらかきむしる。


 一命をとりとめたディカルラ公爵は考える。

 自演劇が失敗に終わった以上に、第二幕に移行しなければならなくなった。

 問題は――邪魔者の排除及び情報の漏洩。


「やるしかねぇ」


 そう低くつぶやくディカルラ公爵の声は、誰かの耳に届く前消えていた。





 同時刻。


 ポルソ第一王子派閥のトップ、四大公爵の一人、エスライト公爵も貴族達とクーデターの実行を計画していた。


 第三王子の即位式は間近。

 このまま行けば第一王子派閥の自分達は失脚する。

 軍の命令権が第三王子に渡る前に、行動を起こさなければならない。


 性格が悪いから家族と貴族に嫌われている第二王子カタストロフは終始傍観していて、若干不気味だが、問題にはならない。

 アヤツの言葉に耳を貸す者などおらんのだ。


 現在軍の九割指揮権を握っている第一王子からすれば、第三王子とその派閥の貴族達は恐るるに足らず。

 もうすぐそこに勝利が見えていると信じているエスライト公爵一派は、愉快に笑っていた。


 ――彼らもディカルラ一派も知らない。知る由もない。

 このポルソを巻き込んだ前代未聞の歴史大事件は、一人の令嬢によって次々と予想外の展開になることを。




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