聞けば聞くほど
それは、私が家出の誤解のダメージを最小限に留めるべく、準備を進めていた時に突如耳にした。
「ポルソ四大公爵、ディカルラ様が暗殺されそうになったのを聞いたか?」
「ああ。一命を取りとめたが、死にかけたらしいぜ」
すれ違う通行人から、そんな会話が聞こえてきた。
聞いたことのない名前。会ったことのない貴族。ポルソという言葉は少し引っかかったけれど、別段気になることもない。
そう、次を聞くまでは――。
「捕まった犯人グループの残党は、ランツェアイル公爵令嬢行方不明事件と関わってるらしい」
私は踏み出そうとしていた足を、止めた。
……どういうこと?
立ち止まり、振り返るが、会話をしていた二人はすでに大通りの人混みに飲まれて消えていた。
ここは王都。
一度見失うと、見つけ出すのは難しい。
……それよりあの二人、とても気になることを言っていた。
”ランツェアイル公爵令嬢事件と関わってる”……?
それは、聞けば聞くほど、奇妙な話。
なぜなら、今回に関しては、ありえない。
私の事件は公式では行方不明ということになっており、調査を進めている最中。
公爵の娘がさらわれたなんて、国民には口が裂けても言えない。
更にそれもごく一部、ダリアンやアルトスのような、国の情報機関や衛兵を統率している貴族が知っているはずだ。
一般人は決して知り得ない。
しかし、先の通行人はどう見ても……。
思わぬところに、伏兵が現れた。
これでは、ややこしくなる一方だわ。
私の計画に齟齬が出るどころか、下手すれば台無しになる。矛盾しか生まれない。
その事態を阻止すべく、私は第二王子の彼――カタストロフに会うため、ポルソへ向かう馬車に乗った。
こういう短い回はいつも扱いに困ります。
他の話と合体させたら、シーンの意味が微妙に変わりますし。




