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……何事?




「……お・嬢・様ッ!」


 ワナワナと手の震えを抑え、ダニエラは握りしめていた紙を破り捨てそうになるのを、ギリギリのところでこらえた。


 ティエラが王都の朝を堪能しているのと同時刻、彼女専属の侍女長ダニエラは毎日最初の仕事――朝食の要望を伺うために部屋を訪れたが、どこを探してももぬけの殻状態だった。


 そしてティエラが残したメモを発見し、先のリアクションに至る。


 メモはこう書かれていた。



   しばらく旅に出ます。

   探さないでください。



             BY ティエラ ド ランツェアイル 


   PS 多分すぐ戻ります                   』


 ――なんとか衝動に身を任せて破り捨てるのを我慢できた侍女長のダニエラは色々言いたい。


 お嬢様!? アバウト過ぎません!?  しばらくってどのくらい!? 

 というか突然どうされました!?  探さないでってどういうこと!? 

 多分!?  しばらくと言いながらすぐ戻るってもう訳わかりませんよ!?


 たったの四行しかないメモは、これ以上ないくらい最高の混乱をダニエラに与えていた。


 そして混乱し、公爵様に報告すべきか悩んでいる間に、他の侍女たちがやってきて、屋敷全体を騒がす大事になってしまっていた。


 



 ――王都での楽しい一時を堪能した私がるんるん気分で帰宅し、屋敷の敷地に入る前に、予想外の光景が待ち受けていた。

 敷地の外からでもはっきりと分かる、おびただしい人の数。

 

 ランツェアイル公爵の屋敷の外は広大な敷地が広がっていて、住み込みで働いている使用人でも、ここまで来ることはほとんどない。

 それが――今は様々な人間によって埋め尽くされている。

 我が家の侍女、使用人、衛兵から王都の衛兵や騎士団、警備隊、猟師その他色々。中にはダリアンとアルトスもいた。


 悲しい表情の侍女たちに囲まれて、ダリアンは泣き崩れていた。


 ……何事?

 そう思うのも、無理はない。


「あの……これはなんの騒ぎですか?」


 私は偶然通りかかった人を装い、野次馬に尋ねる。


「ん? ああ? ここに住んでる偉い貴族の娘さん、さらわれて行方不明らしい」

「俺が聞いた話には、敵国の人質になってる」

「違う違う、好きな男と駆け落ちだよ」

「……ドラゴンの討伐に出ているんじゃねぇの?」


 ……数時間の家出が、偉いことになっている件について。




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