みんなの前で披露したらきっとその日は人気者
「……ティエラちゃん、一つ聞いていい?」
「いいわよ? 何かしら?」
「……なぜ俺、正座させられているんだ?」
「わからないの? 心当たりはなくて?」
「うん、全く」
常識を大自然に置き忘れてきたお猿さんは、説教待ちの状態で正座しながら私を見上げ、その無垢で愚かな瞳は問いかけてくる。
「明日の朝になればわかるわ。答え」
そう言って身を翻し、私は牢屋の中にいる彼から離れる。
「朝? 会いに来てくれるの?」
正座のままお猿さんは鉄格子を掴み、嬉しそうに聞いてくるが、
「はい。答えを告げに来ますわ。――ダニエラが」
「え!? だ、誰!? ティエラちゃんじゃないの!?」
私はこの世のものと思えない極上の笑顔を浮かべて、お猿さんにそう告げた。
驚いて聞き返してくる彼を当然無視し、そのまま牢屋を後にした。
「ティエラ。……心当たりはあるか?」
「ないですわ、お父様」
「そうか……しかし困ったな、刺客を調べているが、吐くとは思えない」
お父様は椅子に深く沈み、考え込んだ。
その後、屋敷の使用人達が私の部屋に集まり、逃げようとしていた黒尽くめの男三人を拘束し、地下の牢屋に放り込んだ。
持ち物を調べ、今は身元を特定している最中。
ちなみにあの三人の隣はお猿さん。
「ところで体は大丈夫……か? 医者を呼んだほうが……」
「心配要りませんわ、お父様。もう治りました」
お父様は思い出したかのように尋ねる。
あれだけ使用人の前で盛大に吐血していたら、心配されるのも無理ないわ。
「いや……でも、あんなに血を撒き散らしたのに? やはり医者を……」
「お父様、年頃の女の子なら、吐血の一つや二つ、別におかしなことではありませんわ」
「え? そ、そうなのか?」
「はい、そうですわ。ほら。う……ぐっ、ゲホ……! ガハッ」
証明するように、お父様の前で吐血して見せた。
「お、おい……本当に大丈夫か!?」
「えぇ、もう治りました」
「早っ」
「ところでお父様」
「……何だ?」
「病弱な女の子について、殿方にはどう思われているのでしょうか?」
「……はぁ?」
「保護欲そそられませんこと?」
「……どう、かな」
曖昧な返答に落胆してしまう。
「そう、ですか……」
そんな私を気遣うように、お父様が、
「普通は見たら心配になるけどな……」
と苦笑いしていた。
「それって……つまり注意は引いているってこと!?」
「え?……ど、どうだろう……」
希望の光を見出した私の問いに、お父様は目を泳がせながら答えた。
歯切れが悪いわね……どちらなの?
「まあ……間違いなく注目の的だろう」
「そうですか……ありがとうお父様、参考になりましたわ。となると、チャンスは次のパーティーですわ……」
「え? なんのこと? 次のパーティー?」
「お父様、私……頑張ります!」
「お、おう……?」
注目の的間違い無し。




