表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/59

みんなの前で披露したらきっとその日は人気者




「……ティエラちゃん、一つ聞いていい?」

「いいわよ? 何かしら?」

「……なぜ俺、正座させられているんだ?」

「わからないの? 心当たりはなくて?」

「うん、全く」


 常識を大自然に置き忘れてきたお猿さんは、説教待ちの状態で正座しながら私を見上げ、その無垢で愚かな瞳は問いかけてくる。

 

「明日の朝になればわかるわ。答え」


 そう言って身を翻し、私は牢屋の中にいる彼から離れる。


「朝? 会いに来てくれるの?」


 正座のままお猿さんは鉄格子を掴み、嬉しそうに聞いてくるが、


「はい。答えを告げに来ますわ。――ダニエラが」

「え!? だ、誰!? ティエラちゃんじゃないの!?」


 私はこの世のものと思えない極上の笑顔を浮かべて、お猿さんにそう告げた。

 驚いて聞き返してくる彼を当然無視し、そのまま牢屋を後にした。






「ティエラ。……心当たりはあるか?」

「ないですわ、お父様」

「そうか……しかし困ったな、刺客を調べているが、吐くとは思えない」


 お父様は椅子に深く沈み、考え込んだ。

 その後、屋敷の使用人達が私の部屋に集まり、逃げようとしていた黒尽くめの男三人を拘束し、地下の牢屋に放り込んだ。

 持ち物を調べ、今は身元を特定している最中。


 ちなみにあの三人の隣はお猿さん。


「ところで体は大丈夫……か? 医者を呼んだほうが……」

「心配要りませんわ、お父様。もう治りました」


 お父様は思い出したかのように尋ねる。

 あれだけ使用人の前で盛大に吐血していたら、心配されるのも無理ないわ。


「いや……でも、あんなに血を撒き散らしたのに? やはり医者を……」

「お父様、年頃の女の子なら、吐血の一つや二つ、別におかしなことではありませんわ」

「え? そ、そうなのか?」

「はい、そうですわ。ほら。う……ぐっ、ゲホ……! ガハッ」


 証明するように、お父様の前で吐血して見せた。


「お、おい……本当に大丈夫か!?」

「えぇ、もう治りました」

「早っ」

「ところでお父様」

「……何だ?」

「病弱な女の子について、殿方にはどう思われているのでしょうか?」

「……はぁ?」

「保護欲そそられませんこと?」

「……どう、かな」


 曖昧な返答に落胆してしまう。


「そう、ですか……」


 そんな私を気遣うように、お父様が、


「普通は見たら心配になるけどな……」


 と苦笑いしていた。


「それって……つまり注意は引いているってこと!?」

「え?……ど、どうだろう……」


 希望の光を見出した私の問いに、お父様は目を泳がせながら答えた。

 歯切れが悪いわね……どちらなの?


「まあ……間違いなく注目の的だろう」

「そうですか……ありがとうお父様、参考になりましたわ。となると、チャンスは次のパーティーですわ……」

「え? なんのこと? 次のパーティー?」

「お父様、私……頑張ります!」

「お、おう……?」




注目の的間違い無し。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ