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ガチ勢の闇




「……難しくても構いませんわね?」

「えぇ、だが前提として私達が達成できる範囲でお願いします。もちろん無理難題をふっかけるのも構いません。そこは姫君の裁量次第だね」


 カタストロフに尋ねると、彼は微笑みながら答えた。

 ……とても合理的。悪くない。


 お猿さんは不満そうにカタストロフの発言に抗議の声を上げているが、無視。

 お猿さんの友達はフィレをやりたそうにこちらを見ているが、同じく無視。


 ……条件ね。二人が達成できる範囲で、かつ私にとってこの膠着状態を打破できる、条件。


 すぐにいくつか思いついたが、同時に気づく。――これは、私の対応力が問われる。

 片方を贔屓にしては、もう片方の反感を招くでしょう。かと言って、二人に合わせながら、ちょうどいい感じの条件は出しづらい。

 平等に行こうにも、二人の身分はかけ離れており、バランスは取りづらい。


 ……第二王子と男爵令息を同時に納得させ、不平等にならないよう、かつこの場面を丸く収められる条件――。


 と、一見難しそうに思わせるが、それは相手が私でなければの場合だわ。残念だったわね、挑む相手を間違えたことを、その身に教えて差し上げますわッ!


『むー、どうしよう……』と口に言いながら、困りましたわ表情を浮かべて、ごく自然に、自然にを装い、くるりとターンし、顔を見られないようにみんなに背中を向ける。


 直後――ふ、と不敵な笑みを漏らす。


 なんのつもりかは存じませんが、これは私にとって完全なる助け舟でございますわ。

 えぇ、だってそうでしょう、カタストロフは二人と言った。そして達成できる範囲と言いながら無理難題でも構わないとも言った――それっておかしくない?


 普通ライバルは蹴落としたい存在ではないのか? それに後半の発言は矛盾している。

 ……いえ、矛盾はしていないけど、あまりに合理的で、効率的だから違和感を感じるわ。

 私の女の勘は、言葉の裏側に隠された真意と矛盾があると告げる。


 しかし、その真意を探り、読み取ろうにも今のところ情報が不足している。


(いいですわ。私にとっても助け舟であることに変わりはありません。あなたの意図はわかりませんが――ここは乗ってあげましょう)


 答えは最初から決まっていて、一つしかない。

 いくつかと言ったが、それは選択肢を広げるためのものに過ぎない。


 意を決し、私は振り返ろうとした――が、いつの間に隣に来ていたダリアンが私の手を掴み、制した。


「……ダリアン?」

「……ティエラちゃん、条件は一つしかありませんわよね?」


 え?

 心が、読まれていた?

 ダ、ダリアン?

 内心のうろたえを抑え、どういう意味? と彼女に尋ねようとした瞬間、彼女がボソッと笑顔で、


「蛆虫共は未来永劫ティエラちゃんの半径2億キロ以内に近づかないようにお願いという条件ですね?」


 男性陣に聞かれない音量で言った。


 ……。

 …………。

 ………………。


 ……え? そっち?

 あ、いや、違う。今なんて?

 ……ダリアン?……というか、候爵令嬢にあるまじき発言ですわね……今の。


「……ダリアン、それはいくらなんでも言い過ぎ……」

「うん、わかります。ティエラちゃんの言いたいことは」


 本当? 良かった~……さすが私の親友――


「もうティエラちゃんったら優しすぎますわ。下等生物の蛆虫相手でも傷つけないよう気を使うティエラちゃんはさすがですわ。……でもね? ゴミ虫ははっきり言わないとつけあがるんですよ?」


 ――全ッ然わかってないわこの子!


「……あのね、ダリアン。私、」

「やっぱ害虫は駆除しないとね? 徹底的にね――頭をプチっと、腹をブスっと、両足を潰し、目玉をえぐり出し……」

「……変なもの食べてない? 害虫は言い過ぎ、それと後半怖い」

「……ううん? あれ、私、害虫って言いました? 後半? なんのこと? 私、なんか言いました?」


 まさか無自覚?


「……覚えてないなら良い。とにかく、そんなひどいことは言えません」


 くるりと、振り返り――。


「条件は決まりましたか?」

「えぇ。まずは友達から始めましょう」


 やっぱ、これでしょう。




ダリアン、158CM、46KG。

3サイズ99 56 89。外見は気弱でおとなしい人畜無害ふわとろボディ小動物系。こんないい子が闇を抱えている訳がありません。

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