こんにちは 人生(2回目)
夏休み明けの模試は課題をしていなかったにもかかわらず良い手応えでした。
ですがそういうときに限って大きなミスをするんですよね…。
暗闇の中で抱き抱えられる感覚。巨大な手に持ち上げられて思わず声を上げてしまう。
「おぎゃあああ!」
…?、今のは私の声か?だが聞こえてきたのは間違いなく赤ん坊の声だ。
確かめるためにもう一度声を出してみる。
「「おぎゃあああ!」」
何やら声が増えたような気がするが、二度も同じタイミングで声が上がったのもおかしい。
確かめるようにゆっくりと目を開ける。
「あっ、目を開けましたよ」
「初めまして、あなたの名前は咲奈よ。お誕生日おめでとう!」
目を開けるとそこに居たのは看護師と見られる女性と私を抱き抱えている女性の2人が居た。
おかしい、私はあの時にトラックに跳ね飛ばされて死んだはずだ。それが何故自分よりも大きな女性に抱き抱えられているんだ?それにお誕生日?私の誕生日はあと三ヶ月も先の事だぞ。
いや、心当たりがあるにはある。だがこんな荒唐無稽な話を誰が信じられる?しかし、この状況は私の知る限りではあれしか考えられない。
突然の死からの急な場面転換、どうやら私は転生というものをしてしまったらしい。死に際の夢や幻と言った方がまだ現実味があるが、今は転生したという結論にしておく。
「そしてこっちが葵よ、あなたの双子の妹。仲良くしてね」
母親と見られる女性が私の向きを変えて反対方向を向かせる。そこには白い布に包まれた赤ん坊がいた。この子が葵なのだろう、そしてどうやら私は双子らしい。
「可愛らしい姉妹ですね、おめでとうございます」
「早速お父さんに知らせてあげないと!」
「しばらくは安静にしてください」
「えー…」
そして何やら聞き逃せない事をサラリと言っていた。
双子というのはわかるが、姉妹だと?私は前世では間違いなく男だった。なのに姉妹?先程部屋を見たときには看護師とこの母親とみられる女性、それに隣のベッドにいた赤ん坊の他にはこの部屋には誰も居なかった。
消去法的に私が女になったと考えるべきだが、どうにもモヤっとするものがあるな。
前世では変身願望は無かったはずだが…まあ生まれ変わったというだけでも奇跡的な事なのだろうし、この事に関しては文句を言うまい。
しかし、赤ん坊の身になってしまったからか早くも眠くなってきた。我慢しても意味がないだろうし、今は眠気に身をまかせることにする。というわけで一旦お休みだ。
さて、転生してから数週間を経てある程度の情報が集まった。
まあ集めたと言うよりは大半は話を聞いて情報を収集・整理していただけと言う感じではあるが。
まず最初に、転生したというのが夢でも幻でも何でもなく事実であるということが一つ。
ようするに、一度死んで人生にサヨナラをした筈が何の因果か生まれ変わって、人生にこんにちは(二度目)をしたということになる。
次に今世での私の名前だが、織幡 咲奈、そして双子の妹の名前が織幡 葵である。織幡家の家族構成は父と母に私と葵の2人を加えた4人家族となっている。
家は貧乏でもなければお金持ちと言うわけでもないという所謂中流階級で在宅地は閑静な住宅街にある。
両親は共に二十代前半と若いが借家ではなく一軒家なあたり中流階級とは言っても一般以上の稼ぎはあるらしい。
基本的に両親は共働きらしいが、現在は私と葵の世話をする為に母親が休職中。
ちなみに仕事に関してはどちらも公務員で安定した給料を得ているらしい。
そんな一般的な家庭だが現在私には少し困ったことがある。
それは…
「ご飯の時間ですよ〜」
そう、授乳である。
幾ら意識がはっきりしているとはいえ現在の私は生後数週間の赤ん坊であり、授乳期の真っ最中である。
いくら必要なこととはいえ私の前世は男であり、若い女性に胸を近づけられるという行為には羞恥心が伴う。
なので、一刻も早く終わらせて欲しいが為に、ある程度のことは我慢して少量を飲んだらすぐに口を離すようにしている。
「あら、もう大丈夫なの?」
「だー」
「そっか、じゃあ次は葵の番ね。それにしても咲奈はあんまりおっぱいを飲んでくれないから少し心配になっちゃうなー」
すまない母よ、代わりに葵が大量に飲んでくれるから。
食の細い(と思われている)私と違って葵は毎回少し心配になるほどに飲んでいる。この調子でいったら将来はいろんな意味で大物になりそうだ。
相変わらず吸い続けている妹の将来を心配しつつも、お腹が満たされた私は眠くなり、そのまま目を閉じて昼寝をすることにした。
次に眼が覚めるのは夕方になってからだろう。
次回の投稿は不明です。
というかこの作品自体ノリと勢いで書いたので
どこまで続くか、どんな展開にするのか、全く考えておりません。