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失格の魔物使い  作者: 原子牛
Chapter1 絶望
7/25

7 絶望の果て

「やっぱり来たね、クラウド」


「ソフィア……ッ!」


 神殿の奥。


 ”召喚の儀”が行われる召喚の間に、ソフィアとその相棒のレックス、そしてどこかぐったりとした様子のルビィがいた。


「きゅう……」


「ルビィ! ソフィア、ルビィに何をした!」


「んー? この子とコンタラクトしようと思ったんだけど、その気がないみたいだから、気が変わるまで痛めつけてたの」


「お前……ふざけるのも大概にしろよ……!」


 コンタラクトは人と魔物、双方の合意があって初めて成立する。


 それを暴力で解決しようとするのは、魔物の尊厳を無視した行いだ。


「はぁ? 何熱くなってんの? 大体、Fランクのクラウドじゃコンタラクトできないから、Sランクのあたしが契約してあげようとしてるんじゃん。親切心だよ、親切心」


「ずいぶん勝手な親切心だな……ルビィは返してもらうぞ」


「んー、それはダメ。今から言うことを聞かないこの子を生贄にして、新しい魔物を召喚するんだから。いいでしょ? クラウドと契約してるわけでもないんだし」


 こ、こいつ……!


「レックス、そこの死にぞこないに【ファング】よ」


「がう……」


 レックスだって嫌がってる様子だ。


 当然だろ。レックスはルビィに惚れてるんだから。


 なんで……なんで大事な相棒にそんな惨いことをさせられるんだよ。


「……はぁ。言うことを聞く気がない子にはおしおきね」


「ぐわっ!?」


 ソフィアがスッ、と右手を掲げると、レックスが苦しみだす。


「な、何をしてやがる!」


「知らないの? モンスターリングには魔物に命令を強制させる機能も備わってるんだよ」


「そうじゃない! 魔物の意思を尊重しろ!」


「自分の魔物にどう接しようが、あたしの勝手でしょ」


「ソフィア……どうしちまったんだよ! お前はそんなことするヤツじゃなかっただろ!」


 おれがそう言うと、ソフィアは舌打ちをした。


「はー、うざ。あたしはね、ずっと昔からあんたのことが嫌いだったの。妙に魔物に好かれるところも、暑苦しいところも、全部が嫌いで仕方なかった。お父さんに言われてたから無理矢理仲良くしてただけだから。……でも、面倒な茶番ももう終わり。あたしが王子様と婚約する手筈が整ったから、あんたはもう用済みってわけ」


「王子様……?」


「そ、王子様。現国王と王妃の子供で、正真正銘の王国の王子様。あんたみたいな敗北者たちの息子とは違ってね」


 ちっ、散々言ってくれるじゃねーか。


 敗北者たちの息子……たしかに間違ってはいないのかもしれねーがな。


「どんな最低の境遇であっても、おれを育ててくれた母さんを馬鹿にするのは……許せねえな」


「は? きっしょ。許せないって……じゃああんたに何ができるってゆうの? Fランクの失格者が、Sランクのあたしにさ」


「やってやるよ……ぶん殴る!」


 おれは駆けだす。だが。


「レックス、【ファング】よ!」


「ぐぅ……がうっ!」


「! ぐっ!」


 レックスに噛みつかれ、おれは倒れ込んだ。


「ぐ、離せ!」


 引き剥がそうとするが、びくともしない。


 なんつー咬合力だ。


「てかさ……クラウドもつまんない男だよね」


「……何が言いてえ」


「折角Fランクに仕立て上げたのにさ、そんなに絶望してないみたいだったし」


 絶望してないだって?


 泣くほどしたっての。


 こいつには絶対教えねーけどな。


「あたしが王立エムレム学院に行くって自慢しに行った時はすっかり元気になってたし、加えてあたしのレックスよりもレアな魔物を手に入れてるし。ほんっと、あんたってつまんない男」


 このくそアマ……おれに自慢するために家に来たのかよ。性悪にも程があるぜ。


「クラウド、あたしの未来のために死んでくれる?」


「くせー口を開くな」


 ピキ、とソフィアの額に青筋が立った。


「……あっそ。レックス、戻ってきなさい」


「がう」


 舐めやがって。だがこれなら――


「――クラウド!」


「!」


 咄嗟に振り向くと、母さんがいた。


 良かった……無事だったのか。


 つーか、あのレインに勝ったのか? 凄いにも程があるんだが。


「よし、これで形勢逆転だ――」


 ――待てよ。マロンはどこだ?


 ガシッ。


「うぐっ! か……母さん?」


 ど、どうなってる。


 なんで母さんがおれの首を絞めてるんだ……!


「ぷっ……あははっ! よくやったわ、レイン!」


「……この程度、私のガンドロフには造作もないことですよ。お嬢様」


 レイン・ハビヘルデス……ッ!


「コカトリスの【支配の魔眼】の効力ね?」


「その通りです。いくら『戦姫』と名高い前王妃といえど、我がガンドロフを初見で打ち破ることはできなかったようだ」


 こいつもおれたちの正体を知ってたのか……。


「ばいばい、クラウド。—―母親の手で死ね」


「が……ぁ……!」


 母さん、まじに操られてる。


 やべえ……意識が飛びかけてんぞ。


「きゅうっ!」


「っ!」


 立ち上がったルビィが走って来て、母さんを突き飛ばした。


「げほっ、げほっ……助かったぜ、ルビィ」


 だが、母さんはまだ操られたまま。


 どうすれば……。


「レイン、できるだけ苦しませながら殺して。絶望する顔が見たいの」


「かしこまりました。ガンドロフ、【毒爪(どくづめ)】」


「うあっ!」


 コカトリスの爪が振り下ろされ、おれとルビィは吹き飛んだ。


「ル、ビィ……」


「きゅう……」


 ちくしょう、毒で痺れて体が動かねえ。


「お嬢様、こっちの元王妃はどうしましょう」


「ああ……そっちはさっさと殺しちゃっていいわよ」


 ……おい。


 頼む。


 やめてくれ。


 それだけは。


「――やれ、ガンドロフ」


「あ……」


 ぐしゃり。


 鮮血が舞う。


 母さんの体が倒れていく。


「う、そだ……」


「あっ、すっごい絶望してる顔ー!」


 がしっ、と頭を踏まれる。


 視界が暗くなっていく。


「うんうん、満足♪ レイン、行くわよー」


「はい、お嬢様」


 ああ。


 こんな。


 こんなことが許されるのか。


 憎い。


 憎い。


 憎い。


 憎い。


 憎い。


 憎い。


 憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。


「きゅ……」


 ふと。


 ルビィの小さな手が、おれの右手に触れた。


 直後。


 ――双方の合意を確認、コンタラクトを受理します。▼


 ――契約者のスキル【シンクロ】の効果、発動しました。▼


 ――契約者と魔物の状態異常が解除されました。▼


 ――魔物のステータスを表示しますか?▼


「あ、あぁ……」


 ――魔物のステータスを表示します。▼


===


 【ルビィ】LV.F 種族:フェンリル(変異体) 進化状態:最初期


 物 攻:C

 特 攻:B

 物 防:D

 特 防:D

 体 力:E

 速 度:B

  運 :C


 特殊スキル:炎無効、憎悪(New!)

 スキル:ファイア・ブレス


===


 ああ、神様。


 おれにチャンスをくれるのか。


 ありがてえ。


 あいつらだけは。


 おれと母さんの人生を狂わせた奴らだけは。


 絶対に。


 殺してやる。


 ――【クラウディオ・バレーロ】はスキル【復讐者】を獲得しました。▼

Chapter1はこれにて終了です。

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