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失格の魔物使い  作者: 原子牛
Chapter1 絶望
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6 十五年の真実

「……何を言ってるんだ、母さん」


 ソフィアがおれたちを陥れるなんて……まさか。


 でも。


 でも……どこかで「やっぱり」と思ってる自分がいる。


 ルビィが家にいることを知っているのは、おれと母さん以外にはあいつだけだから。


 だから必然的に、犯人はあいつの他にありえないんだ。


「でも……なんでだよ」


 あいつは大切な幼馴染で。


 おれがFランクだって分かっても、変わらず接してくれていた唯一の友達なのに。


 信じていたのに……。


「混乱するのも分かるわ。だけど、それが真実よ」


「母さんは……どうしてそのことを?」


 問うと、母さんは目を伏せた。


「とある事情があって……知っていたけど、言えなかったの。ほんとうにごめんなさい」


「……?」


 なんだよ。


 おれの知らない何があるってんだ。


「そうね……。これを話さないと始まらないわよね」


 そう言って、母さんは意を決したように口を開いた。


「あなたのお父さんがどんな人だったか、知ってる?」


「おれの……父親?」


 おれがまだ小さい時に蒸発したっていう、碌でもない男のことか。


「それは真実じゃないの。あなたのお父さんはね――」


 瞬間、遠くで大きな破砕音が聞こえた。


「! 来たのね……!」


「来たって、何が!?」


「この町にいる、数少ない私たちの味方よ」


 直後、看守の悲鳴が聞こえ、そいつはおれたちの前に現れた。


「お前は……マロン!」


 マロン……ソフィアん家のケルベロスが、なんでここに!?


 そしてよく見ると、マロンはきらりと光る物体を咥えていた。


「マロン、檻を壊してちょうだい。クラウド、離れて!」


「わん!」


 マロンのタックル一回で檻は吹き飛んだ。凄いパワーだ。


「よくこれを取って来てくれたわね。凄いわ、マロン」


「わふ!」


「母さん、どうなってる!?」


「それは後で説明するわ。とにかくこれを付けなさい」


 言いつつ、母さんはマロンから何かを受け取っておれに寄越した。


 こいつは――おれが母さんに貰ったモンスターリング。


「母さん、でもおれは……」


 Fランク……失格者だから、付けちゃいけないんだ。


「クラウド、思い込みは敵よ。あなたには魔物使いとしての類まれなる才能がある。それは、モンスターリングを嵌めれば分かるはず。さあ、時間がないわ。モンスターリングを付けなさい!」


「っ、分かったよ、つければいいんだろ! くそ、どうにでもなりやがれ!」


 モンスターリング――一度もつけることがないと思っていたそれを、右手の人差し指に嵌める。


 途端、頭の中に文字が浮かび上がっていく。


 ――【クラウディオ・バレーロ】を使用者に登録しますか?▼


「あ、ああ……する」


 ――登録完了。簡易ステータスを表示します▼


===


 【クラウディオ・バレーロ】


 称号:失格の魔物使い

 ランク:SSS

 契約魔物:なし

 スキル:シンクロ、超成長、王の血族、魔物愛


===


 これは……おいおい、マジかよ。


 ランクも驚きだが、それ以上に……


 王の血族、だと?


「あなたのお父さんは王国の前国王、ヴィルス二世。そしてあなたは、その隠し子。これは数少ない関係者以外は誰も知らない、歴史の真実よ」


「…………まじで?」


「おおまじよ」


 なんてこった。


 人生十五年。天まで飛び上がりそうなくらいの衝撃だぜ。


「じゃあなにか? つまり母さんは……」


「ええ、王妃よ。元、だけれどね」


 嘘だろおい……ぶったまげどころじゃねーぞ。


「だ、だったら、今王国を動かしてるのは誰なんだ?」


「前国王の弟とその妃よ。十五年前、私たちは陥れられ、乗っ取られたの。そうして追手から逃れるようにこの町に辿り着いた。けれど十年前、私たちはとある人物に見付かってしまった。それが魔物使い協会の権力者、モンタナ副理事よ。弱みを握られた私たちは、十年以上もこの町に縛り付けられていたというわけ。……そして今になって、私たちを秘密裏に処刑しようとしている。まあ、何か裏があるはずね」


 モンタナ副理事……ソフィアの父親か。


「そう、だったのか……」


 たしかに合点はいく。


 小さい頃から、おれは町の外に出ることを禁じられていた。それは万が一にでもおれの存在が世間に知れ渡ることを防ぐためだろう。


 ソフィアとも積極的に仲良くするように言われていた。王族の血を引くおれを監視下に置くためだろう。


 だが今はもう不要になり、おれたちを処刑しにかかっている。


 母さんの言う通り、何か裏があるのだろうか。


 ……あーくそ、頭の整理が追い付かねえ。


「もっと話しておきたいことはたくさんある。けど時間がないわ。私と一緒にマロンに乗って」


「逃げるのか?」


「違うわ。—―ルビィちゃんを助けに行くのよ」




 母さんとおれを乗せたマロンはあっという間に牢屋のある地下を抜け、ガビの町を疾駆していた。


 遠くでは緊急用の鐘が鳴り響き、夜だというのに、人々の喧騒が町を包んでいる。


「なあ母さん、なんでマロンはおれたちを助けに来たんだ?」


「言ったでしょう、数少ない私たちの味方だって」


「おれが聞きたいのはそうじゃなくって」


 だってマロンは、ソフィアの家で飼ってるケルベロスなんだぜ?


「あなたは小さかったから知らないでしょうけど……元々、マロンは私の相棒だったの。でも、奪われたのよ」


「なっ、まさか――」


「ええ、ソフィアちゃんにね。それも三歳の時のあの子に。弱みを握られている以上、私はあの子にも逆らえないから」


 なるほど……母さんはそんな横暴に耐えながら、十年以上もおれを育てていたのか。


 ったく、感謝しかねえ。


「――クラウド、ルビィちゃんはあの中にいるはずだわ」


「ありゃあ……」


 神殿、か。


「――どこへ行く気だ? 罪人ども」


「ッ、マロン、止まって!」


 マロンが急ブレーキした直後、上空から何かが降ってきた。石畳が割れる。


 夜闇に浮かび上がったシルエット。雄鶏と蛇が合わさったようなそいつは――


「コカトリス……!」


「この私とガンドロフから逃げられると思っていたのか? クズどもが」


 レイン・ハビヘルデス……やべえぞ、これは。


 つーか、あいつはおれたちが王家だってことは知ってるのか? まあ、どうでもいいが。


「クラウド。あなたはルビィちゃんの下に行きなさい」


「……母さんはどうするつもりだ」


「ここで足止めする」


「っ、無茶言うな。相手は王国から派遣された魔物使いだぞ?」


「あら。お母さんだって、昔はそれなりに有名な魔物使いだったのよ」


「何をごたごた話をしている? ――やれ、ガンドロフ」


「っ! クラウド、走りなさい!」


「くそっ!」


 おれは神殿に向かって走り出す。


「逃がすな、ガンドロフ」


「――あなたたちの相手は私たちよ。行くわよ、マロン!」


「わふぅ!」


 繰り広げられる激しい戦いを背に、おれは神殿へと駆け込んだ。

申し訳ありません、書いていたら長くなってしまったため、二つに分けました。

次が最後です。それで暗い話は終わりです。

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