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新米皇女の大冒険  作者: 湖乃一場
11/28

(10) 新米皇女は再会する

 金色の光に包まれたクオン、ファナール、アルダールの3人。

「うわっ」

 ざばーーーーーーっ!

 次の瞬間、今度は、いきなり水の中だった。

「ぶくぶーぶくぶくぶー!」

 ファナールの口が動いている。何を言っているのかわからないが、危機的状況らしい。きっと、おぼれるーとか言っているのだろう。しかし、作者としては、助けてあげるわけにもいかないので、とりあえず状況の推移を見守ることとしたい。

 しばらく、水中でじたばたして3人だったが、

「ぷはぁ」

 突然、息ができるようになった。上半身が水から出たのだ。

 クオンは、ぶんぶんと水を振り払いながら、あたりを見まわす。

 すぐ横にファナールとアルダールもいる。よく見ると、水深は50センチぐらいしかないのに、みんなずぶぬれで、そこに座り込んでいた。

「ここはいったい?」  と、アルダール。

「神殿の中庭ってとこじゃないの?ほら、まわりは建物だよ。なんだか神殿っぽいし」

 ファナールが言う通り、上は吹き抜けになっているが、周りは回廊のような建物に囲まれている。自分たちがいるのは、中庭の池の中という感じだ。

「外界との扉が、池の中にあるわけ?いちいち、びしょぬれになって出入りするのかしら?この神殿の人たちは」

 アルダールが立ちあがりながらそう言う。

「不便ねー」

 ファナールも、よいしょっと立ちあがる。

 クオンも立ちあがろうとした瞬間、

「ようこそ、太陽神殿へ」

 という声が聞こえた。3人が声の方を見ると、

 池のそばの回廊に、神官の服装、しかもかなり高位の神官の服を着た女性が立って、こちらを見ていた。年齢は30過ぎというところか。にこにことやさしそうな笑顔。

「ミルバ神官長!」

 アルダールが、明らかに顔を輝かせて、その名前を呼ぶ。

「あらあら、アルダール姫様ではありませんか。お久しぶりですね。ともかく皆さん、びしょぬれですわ。着替えを用意しますから、来てくださいな」

 すたすたと歩き出すミルバ。事態がよく把握できないまま、クオンたちはその後を追う。


 天井に、大きく「リッタ」と書いてある。「光」または「光の神」を意味する言葉だ。この部屋は、「光の間」とでもいう名前なのだろう。

 クオンたち3人は、着替えとして渡された白くて長い服をはおっている。3人ともまったく同じ格好だ。

「ここは、客間なのですよ」

 ミルバは、3人と向かい合わせに座っている。テーブルの上には、ミルバ自らが淹れたお茶が並んでいた。

「もうひとりも呼んだのですけど…遅いですわねぇ」

 ミルバは、そう言いながら、閉まっている扉の方を見る。彼らがこの部屋に入ってきたのとは反対側の扉だ。

「もうひとり?」

「ええ。こんな時代ですから、すっかり人も減ってしまって、ここには私の他には、その人しか、いないのですよ」

「そうなんですか」

 そんな話をしているうちに、その扉の外から、何か、音楽が聞こえて来た。

 弦楽器だけの、なんだかしっとりとしたムードがありそうな曲だが、クオンたちが知らない曲だった。

 しだいに音楽が盛り上がって、管楽器や打楽器も加わってくる。そして、音がだんだんと近付いてくるようだ。ミルバはその正体を知っているらしく、にこにこしているだけである。

 音楽が最高潮に達した瞬間、ジャーーーーンというシンバルの響きと同時に、閉まっていた扉がばっと開かれた。そして、開いた扉からは、白い霧が流れ込んでくる。

 いつのまにか、そこら中に白い花びらが舞っていた。

 霧の中から、ゆっくりと、ある人物があらわれた。

 やたらと金色や銀色の飾りのついた派手な神官服。背中には、左右3枚ずつの金色の大きな羽が広がっている。

 その人物は、ひらひらと舞っていた白い花びらのひとつを右手で受け取る。

「こうしてまたお会いできるとは、やはり運命にはあらがえぬものなのですね」

 その青年の声に、室内は、凍りついていた。……いろんな意味で。

 クオンには、おなじみの男である。まさかこんなところで会うとは夢にも思わなかったので、当然のように、「げ」という苦い顔をしている。もちろんファナールも、会ったことがあるから知っている。

 そして、アルダールも、その青年を知っていた。

「ごぶさたしています。ビフォレスのニルゼン王子殿下でいらっしゃいますよね?」

 とアルダールが丁寧に聞くと、ニルゼンはあわてて、

「な、なんのことでしょう? 私はたしかにニルゼンですが、しがない一神官に過ぎません」

「ニルゼンさん、皆さん、あなたのことを知ってらっしゃるようですけど?」

 ミルバが、笑顔を崩さず、そう指摘する。

「ミルバ神官長! ひょっとして、あなたも私の正体をご存知だったのですか? ……ああっ! 私は、なんと罪深いことをっ」

 のたうちまわっているニルゼンを無視して、クオンは、ミルバに尋ねる。

「でも、なぜ仮にも一国の王子様が神官に?」

 「仮にも」の部分が妙に強調されていたような気もしたが、その言葉を聞いて、のたうちまわていたニルゼンは、さっとひざまずいた。そして、微笑みを浮かべながら、

「私は、王になるより、神官になりたかったのです。愛する美しい姫君のために、お役にたてるのは神官しかないと思い、決意しました」

「姫君のためって言ったら、普通、騎士とか戦士じゃないのか?」と、クオン。

「私の愛する姫君は、その……お強くて、私など、まったく剣では歯が立ちませんでした」

「ふぅん」

「クオン。あんた、ひとごとだと思って聞いてない?」

 ファナールが、そう言ってクオンをつつく。

「だって、他人の身の上話だろ?」

「別にいいけど」

 そう言って、ふぅとため息をつくファナールだったが、ニルゼンの話は続く。目を閉じて思い出モードに突入しているようだ。

「私は、ある国の武闘大会に参加しました。優勝すれば、姫に求婚できるという」

 それを聞いて、クオンも、ちょっと思い出したことが、あったらしい。

「タンバートでもあったな。そういうの。親父が言い出したんだ。たしか」

「その戦いで、私は勝ち進みました。そして、決勝戦。敵は私よりずっと小さい体格なのに、とても強かった!」

「へぇ」

「私は敗れました」

「そりゃあ、残念だったな」

「剣を落として倒れた私に、優しく手を差し伸べて、にこっと微笑まれたのです。ああっ。花のような、というのは、まさにあの笑顔のことを言うのでしょう!」

「なんだ。そいつって、気味の悪い男だな」

 ニルゼンの身の上話に、いちいちクオンがあいづちをうっているのだが、話は全然かみあっていない。

 話を少しは、かみあわせようと、ファナールが確認する。

「タンバートの武闘大会で、クオンは決勝戦に出た?」

「そりゃそうだろ。いちばん強いやつを決めるってのに、ボクを仲間ハズレにするなんて、許せないからな。でも、なんでファナールがそんなこと知ってるんだ?」と、怪訝な顔をするクオン。

「で、決勝で負かした相手に、手を差し伸べたのよね?」

「そりゃ、勝負が終わったら、そういうもんだろ?」

「そのとき、どんな顔、してたか覚えてる?」

「勝ってうれしかったから、うれしそうな顔は、してたと思うけど」

「で、その相手のひとって、誰?」

「さぁ。覚えてないな」

「と、いうことらしいわ」

 ファナールは、同情を込めた目で、ニルゼンを見た。

「かまいません。『愛』とは、愛されることではなく、愛することなのですからっ!」

 じ~ん。

 よくわからない自己満足で陶酔しているニルゼンを横目で見て、ファナールはひとこと感想を述べた。

「アホね」

「なんだかよくわからないけど、こいつはバカなりにまじめな発言をしたんだぞ。アホはないだろ。アホは」

 クオンが、まったくフォローになっていないフォローを入れる。

「ともかく、私のさだめは決まっていたのです。ミルバ神官長。この日のために、私は神官としての修行をしてきたのですから」

 ここまでバカにされても、ニルゼンは、真剣だ。いや、格好が格好だけに、とても真剣には見えないのだが、真剣なのだ。信じてやってほしい。

 クオンは、うんうんとうれしそうに、

「そうか。立派な神官になるんだな。これで、もう、ボクの前にあらわれることは……」

 と、トンチンカンなことを言っている。まだ、わかっていないらしい。

 ニルゼンは、ひざまずいたまま、さっとクオンの手をとり、キラキラ光る瞳でクオンを見つめた。

「姫! 不肖このニルゼン、神官として、姫のお供をさせていただきます!」

「へ?」

 さすがにクオンも、自分が対象だという事に気付いたらしい。

「いいじゃん。クオン。神官の仲間は欲しかったんだから」

「ち、ちょっと待て。どういうこと?」

「だから、あたしたちと一緒に旅に出ようっていうんでしょ?」

 ニルゼンは目を輝かせて、クオンを見つめていた。昔の少女マンガのヒロインみたい、といえばイメージがおわかりいただけようか?きらきらきらきら。もちろん、クオンの手を握ったままである。動転しているクオンは、その手をふりほどこうとは思いつかないようだった。


 ともかく、4人の仲間が揃った。

 アルダール。リトアイザン王国の王子。戦士。ただし、女装が趣味。

「さりげなく、いいかげんな解説をつけないでくださる? 女装は趣味でしてるわけじゃないのよ!」

 ニルゼン。ビフォレス王国の王子。神官。ただし、変態。

「この超絶美形キャラである私を、変態とは心外な」

 ファナール。魔導帝国の皇族の末裔。魔法使い。ただし、スライムに変身してしまう。

「ま、事実の列挙ね」

 クオン。太陽帝国の皇女(ただし、本人は皇子と主張)。いわゆる勇者。

「本当に皇子なんだ! ボクはっ!!」

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