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喪失と大人

 人は生まれながらにして平等である。



 ――そんなものは、嘘だ。たとえ馬鹿でも信じないだろう。



 まず、人は生まれながらにして不平等であり、どれだけ年月が経ったところで、それが収束することはない。むしろ、上下の格差は広がる一方だ。


 金や見た目や容姿、知能や運動神経などは、生まれながらにして不平等だし、自分ではどうすることも出来ない。努力すれば多少はマシになるものの、どれだけ上位層に近づけるかは人それぞれである。また、努力を続けられるというのも才能の一種であると僕は考えている。


 生まれながらにして持っていない物があれば、それが無いことが当たり前であるから気にせず生きることが出来る。

 ……だが、それが人生の途中で失ってしまったものであれば話は変わる。なぜなら、その物があることの良さを知ってしまっているのだから。


 そして、とある少年の場合、それは両親だった。


 ――前までは居た。

 ――だが、今は居ない。


 ――前までは温もりを感じられた。

 ――だが、今は感じられない。


 ――前までは……。

 ――だが、今は……。



 こんな思考が、絶え間なく少年の脳内を渦巻き、支配し続けていた。


 常に、居なくなった過去だけを求め続けていた。

 与えられる未来など、見向きもせずに、失ってもう二度と帰ってこない過去だけを延々と求め続けてきた。


 だから、未来を与えてもらえる幸せに気づくのが他人よりも少しだけ遅かった。

 失うことによって悲しむのであれば、初めから無い方が良かった、とは思わない。過去があったから現在、そして未来がある。それを理解してから、少年は過去を否定しようとは思わなくなった。


 暗闇を経験したおかげで、世界の明るさを知った。

 影があるからこそ、光はある。

 そして、影が濃くなるほど、光は濃くなる。


 そのことに気付けた時、人は変わる。少しだけ、大人になる。

 そして、少年は少しだけ大人になった。


 ――だが、大人になったからと言って、何かが変わる訳では無い。

 大人とは、子供よりも多くの困難に直面するものだ。



 ……そして、大人になってしまった少年は、様々な困難に直面することになった。

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