妖精さんは、なんでも知っています♪
「そしてね、貴女のいた、あの四角い部屋。言うなれば保護室ね。」
ガーネットが、杖を持ちながら私に言った。
そして、私はあの白い四角い、布団とトイレしかない、メガネ持ち込み不可の気の利かない謎な部屋のことを思い出した。
「ああ、あの、殺風景な色気のねー変な部屋ね?」
「あの色気のねーのは、理由がちゃあんとありまぁす。」
「??そうなのか!」
「まずは、まず一番は患者さんに休んでもらいたいということ。これが、お医者さんと、看護士さんたちの願いなのです!」
「……。」
「どーしたの?」
「なんか、悪いこと考えてたな、って、思って。私、なにか悪いことしたかと勘違いされて……それで、とうとう牢獄まがいのところに入れられたかーあいたたたーって、思ってた。」
「あっはは!大丈夫、チガウってば!みんな、治って、霖音ちゃんによくなってほしいんだよ。
患者さん、みんなに、そう。お医者さんたちは、そう願っているのですよ。」
刺激が無いようにね、白い部屋に作られています。
統合失調症になったひと、又は再発しちゃったひとは、とにかく、疲れています。
気力を、人一倍消耗しきっていて、新たにまたエネルギーを充電しなければなりません。
だから、また元気になって、動けるように、エネルギーを、とにかく休憩してもらって補給してもらいたいのですね。
「話は変わるね。」
「おう!」
「……らしくなってきた霖音ちゃん♪」
「ん?……なにがだ?」
「なんでもなーいよ。じゃあ次ね。」
お薬の必要性について。
統合失調症になると、『心の病気なのに』お薬を飲まなくては大変なことになります。
「なんでだ?心にも薬は効くの??」
心、といっても、頭すなわち脳が関係しています。
「さっき、最初に言いましたが、重要なのでもう一度言うね!【統合失調症=情報や刺激に過敏になりすぎてしまうと、脳が対応できなくなり、精神面に症状が現れてしまうことがあります。そのため、感情や思考をまとめてあげることができなくなります。この状態を統合失調症という。】」
お薬は、この、統合失調症の大元の話を聞いて、薬の役目も聞くと、飲もう!!と納得するかたもいるようですよ。
安心してね。薬を、飲むことによって、嫌な目にあうことはないです。もし、あるとすれば副作用、といって、風邪薬をのんだとしても出てくる眠気や気だるさ、といったささいな困ったちゃんくらいです。
でも、ひとによって合わない薬を出されて、吐き気や唾液がかなり増えて困る、といった、困ったちゃん通り越して「ツラすぎちゃん(汗)」になった場合は、お医者さんにちゃんと、詳しく現象を説明して、薬を自分に合ったものに変えていきましょう。
薬は、脳のATフィールドです。
「……ATフィールドって、エヴァ●ゲリオンの超強力バリアのこと?(汗)」
「そこ、しらけた目しなーい。そうそう。某人気アニメのバリアのことです。」
統合失調症になったひとは、少なからず刺激や情報を受けすぎて、脳のフィルターが破れてしまっている可能性があります。
脳の、フィルター。
そう、フィルターとは、見たり聞いたりした情報を、ふるいにかける(お菓子を作るときに、小麦粉を網目状の銀の容器にいれて、粉をマジでホントに細かーくするために、下準備をしますよね。あの作業を、粉を“ふるいにかける”といいます!)、バリアのことです。
要る情報と要らない情報とを。
そして聞く情報と聞かない情報とを。
見ることにする情報と見ない情報とを。
もう、察しがつきましたか?そう。
これを、脳のフィルター(バリア)は、ふるいにかけて私たちに情報を提供しているのです。
この情報の分別の作業は、何億回としています。
通常なら、普通はこの脳の ATフィールド ……即ちふるいのバリアは人間にはちゃんと作動していて、いる情報といらない情報をくべつし、仕分けしてくれます。
なので、選択して物を聞いたりすることができます。
しかしこのバリア、情報が強すぎたり、受けすぎたりしてしまったり、疲れてるのにさらに体を酷使したりすると、頭(脳)も疲労してフィルターも破けてしまいます。
そのフィルターの破れ目から、入ってくるのが幻覚。
「そこで!出てくるのが」
「??」
「お薬なのです!!」
「おー!なるほどなー。」
ドーパミンの量を調節して、バリアをよみがえらせて、脳を守ってくれます。
お薬は、毎日、飲むものですが、
朝の薬は朝の薬で、時間をいつも毎日同じ時間に飲むと、さらに効きます。
薬は、ジュースではなく水でのんでほしいです。じゃないと、飲み合わせ、といって
ジュースとその薬が合うか合わないか、がおのずと最初から決まってますので、合わなかったりしたら大変なことになります。
水だと、すべての薬に合いますので、ご心配なく。
ちなみに、硬水か軟水か?だと、軟水のほうが合います。豆知識です。ピース。
と、いうことで、薬はバリア(フィルター)に効きます。
「てなわけで、薬は嫌だろうけどかわいいもんだから、飲んでみてね。必ず、霖音ちゃんに好影響なように処方されるよう、医師のかたもしっかりちゃんと色んなことを考えてるからさ。……でも、飲み心地はしっかり、霖音ちゃんも伝えてね!」
「はーい!」
「じゃ。そろそろ、看護士さん見回りにくる時間だから、もとの病棟のあの隔離室に戻すね。」
「え??……あ!じゃあ、ちょっとだけ待ってー!」
「なにー?」
「私、本当に治るかな!?」
「統合失調症とは。」
杖をホワイトボードに向けてクルリと動かすと、今までの表や文字は消えて、こんな言葉を書くガーネット。
『統合失調症とは。
「助けて」が言えなくて耐え忍んだ末なる病』
「……です!」
「あ…………」
「なんでもいい。もう、言ってもいいんだよ!?『助けてー』って、ね。」
「そっか……」
なにかが府に落ちた。
そうだ、そうか。私はずっと、声を出して誰かに叫びたかった。
「そして、私は預言します。━━予知能力は全く無いのですが!
曲宮 霖音は、見回りに来た看護士さんおよび担当医師に、ちゃあんと、『ヘルプ(助けて)』が言えます。
だから、大丈夫!!
貴女なら、できる。
……んじゃ!ばいばーい!!」
杖を左手に持ち直し、三回クルクルと回すガーネット。
「ば、ばいばいーーー!またねー!」
風に巻かれ私は目の前が歪むのを見た。
そして。最後に。
「いつも見守ってるよ!早く病気よくなって、人生を楽しめよー!」
という、ガーネットの声が聞こえて……。
シーーーーーーーン……。
気がつくと、目の前には天井があり。
その天井には照明が二個、斜めについていて、それ以外はくらーく、壁の上の方を照らしていた。
「ガーネット……、そっか……。」
ありがとうね。
「……あれ?曲宮さん、眠れないの??」
ライトをもった看護士さんが、ドアからゆっくり静かに入ってきて、声をかけてきた。
「あ、ああ……大丈夫です。でも、
助けてくれませんか?
私、追われてるんです。天界の、私の作った小説のキャラクターに。助けてくださいっ」
「曲宮さん、……大丈夫よ。そんなこと、あるわけないわ。本当に、曲宮さんの書いた小説の人物が、目の前に現れたのかな?思い出してみてよ。」
「いや……実際に、というか、ボンヤリと影っぽく……あと、声も、高周波の超音波みたくて……でも、でも、確かに居て」
「曲宮さん。それはね、幻覚というものだから、だから」
!!!
このキーワード……!
「げ、幻覚??」
「そ。だから、幻だから、無いものなの。大丈夫。勘違いしてるんだね。大丈夫だよ。……もう、寝ようか。明日の朝食の献立はね、ロールパンとコーンクリームスープだよ!起きて、たくさん食べてね。」
「そ、っか……。幻……か。」
「そうそう。まぼろし!じゃあね、おやすみー」
「おやすみなさいー」
霖音は、その後ガーネットのことを密かに信じ、薬もちゃんと嫌がらずに飲み続けた。
何故かガーネットの幻聴は聞こえたがいつも「わたしに話しかけないでー」という変なものだった。
その後診察室のある地下の階に置いてあった冊子に、幻聴は、自らの考えと思考が元となっている、と書いてあり、霖音は「そうか……ならば、すべてこの頭のなかや胸らへんで響き聞こえるこの声は、私の精密な考えのしろものなのか」と考えられるようにもなった。