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脱出
暗闇に目が慣れるどころか、どんどん視界が暗くなっていく。
もう何日経ったのだろう。
喉を引っ掻いた。それでも足りなくて、身体中を掻きむしった。
爪の間にこびりついた泥が、汗が涙が体液が、無数の傷口に染みる。
「ぁ…」
かすれた声を出す。
そうでもしなければ、意識が途絶えてしまう。
「ぁ、あ、ぅ」
柔らかい土を抉り、とめどなく涙をこぼしながら掘り進める。
時おり爪の先に大きな石が食い込み、血が流れた。
空腹は痛みを訴える。
じめじめと冷たい体育倉庫はエリカの体力を奪い、人間としての尊厳さえも奪っていく。
「ぎッ」
無意識にこすった目に土くれが入り込む。
頭も働かないまま、またその目をこすって涙があふれ出た。
「ぃゃ…こん、な…もう…」
助けを求めるように、重い扉を振り返る。
その傷付いた目に、突如眩しい光が浴びせられた。
「うっ…?!」
かすむ視界に、扉を開け放った救世主が映る。
「ぁれ?こんなとこで、どったの?さいとーさん」
視界の先で栗原コヨミは、無邪気に首をかしげていた。