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静寂
静かだ。
中川シヅキ、妹尾ミズキ、高杉キリノ、橋本リコ。
斎藤エリカ、朝比奈マキ。
藤原リナ、井原サキ、若林カナエ。
9人がいない教室では、小林アリサの朗読が静かに響いていた。
割れた窓は綺麗に修理され、なぎ倒されていた机や椅子も、今は整然と並んでいる。
斎藤さんの席には白い花が、誰にも触れられることなく揺れている。
静かだ。
療養中、謹慎中の4人はともかく、行方知れずの5人について誰も話さない。
「…た花を握りしめ、私は崩れ落ちた。友に、愛する友に、この思いは届かないのだろうか…」
朗読が終わり、チョークで黒板をカツカツと叩く音だけが残る。
氏家はそっと辺りを見渡した。
音もなく席についたアリサ…委員長の横顔が、なぜか微笑んでいるように見えた。