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復讐
「私たちは、誰かに殺されたのよ」
「あれは人間の殺意だった。呪いなんていうのはただの妄想だ」
二人に挟まれ、カナエは歩いている。
中庭は気味が悪いくらい静かで、自分たちの足音だけが大きく響く。
その足音が止まった。
「覚えているでしょう?ここ…」
覚えている。かつて斉藤サヤカを沈めた噴水…。
そして、森田サチコという" わたし "もそこに沈められ…死んだ。
「あなたを沈めたりしないわよ?ただ、あの事件をなぞるだけ」
カナエの心の内を見透かしたかのように、アリサは微笑んだ。
怯えたカナエの顔が、噴水に映っている。
斉藤サヤカに手を上げたあのときから、わたしはもう逃れられなかったのだ。
不意にバシャン、と激しい音がして、水面に映るカナエの顔がはじけ飛んだ。
シヅキが投げ入れた、重そうな麻袋が水の底へ沈んでいく。
「必ず犯人は食いつくわ」
アリサの目は麻袋をじっと見つめている。
「そうでないと困る」
シヅキ…否、レイナはすっと目を細めた。
「だってこれは、復讐なのだから」