表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/62

はさみ

「…おい、藤原、聞いてるか?」


はっとしてリナは顔を上げた。

コヨミと話して昼休みが終わり、今は授業中だった。


「気が立っているのも分かるが、これから勉強も難しくなってくるからな。授業には集中してくれ」


気が立っている。そんな風に見えたのだろうか。

斉藤サヤカならば、きっとそんな風に言われることはなかっただろう、とふと思う。


豊橋先生はそのまま何事もなかったかのようにホワイトボードに文字を書き始めた。


リナも気を取り直してノートに向かおうとする。

しかしその時、視線を感じた。


「…」


顔を上げると、井原サキと目が合う。サキはまだ首に残るあざを触って、視線をそらす。


その途端、なんとも言えない感情でリナの身体は熱くなった。


傷付ける優越。

傷付けてしまう罪悪感。


支配したい欲求。

支配されているような孤独感。


何を考えているか分からない、その目。

その目が似ているのだ。井原…そう、井原ミワに。


そう考えるやいなや熱くなっていたリナの身体は凍り付いた。


確かに斉藤サヤカをいじめていたのは私だったのだろう。

けれど、最初はからかい程度だった。


エスカレートさせたのは、井原ミワだ。


今にも死にそうな斉藤サヤカの喉にはさみを突き付けたのは。

ベランダから飛び降りさせることを考えたのは。

そもそも、斉藤サヤカの援助交際の話を持ち出したのは。


全て…。


残虐で残忍なのは、誰よりも彼女だった。


彼女なら、あんな無残な方法で人を殺すくらい、やりかねない…!


いつの間にか授業が終わり、クラスメイトが席を立っていく。


殺される前に、殺さないといけない。


リナは立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ