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正体
「コヨミは単純にバカだから…楽なんだよなぁ…それに比べてあいつは…」
マキは呟いた。そしてポケットから手紙を取り出す。
カバンの中にいつの間にか仕込まれていた、真っ白な便箋。
今日の日付と、時間、場所だけが書かれたものだったが、マキには分かった。
これは犯人からの手紙。
来るべき時が、来たのだと。
「…あんただったのね」
遅咲きの桜を眺める彼女、それは。
「委員長…」
声が震えるのを抑えられなかった。
あの委員長が?シズカの豹変よりももっと信じられない。
けれどこんな夜更けにこの場所を訪れるのはただ一人、この手紙の差出人だけだ。
「気付かなかったでしょう?結構良いのよ、委員長の肩書も」
「そう…みたいね」
信じなければならないのだろう。皆、なにかしら裏の顔を持っているのだ。
振り向いた委員長、小林アリサはゴミ袋を持っていた。
かすかにガソリンの刺激臭がする。
「何をするか…分かるわよね?」
マキは目を見開き、うなづいた。