退場
読み返してみたら色々ミスに気付いていたたまれない。
斎藤エリカが途中から斉藤エリカに変わってましたが他意はありませんのであしからず。
暇だったら直しときます。
「あ、斎藤さん」
それから数分後、エリカは高千穂さんに声をかけられた。
「あ、高千穂さん…」
戸惑いがそのまま声に出てしまい、エリカは少し後悔した。
正直、高千穂さんの事は苦手だ。
彼女は高千穂財閥の令嬢で、この学院にも多額の出資をしていると聞く。
そのせいか態度が大きく、いつも取り巻きを連れている。
その取り巻きを使い、気に入らない輩をつぶしているという噂もあるほどだ。
今も後ろにしっかりと土佐さんと若林さんが控えている。
「斎藤さん、話したいことがあるんだけど、ちょっと来てくれない?」
有無を言わせぬ口調で言われて、エリカはうなずくしかなかった。
「あ、あの、話って…?」
どこかに向かってずんずん歩き出した高千穂さんに、エリカは恐る恐る問いかけた。
「すぐ分かるわよ」
そうして連れてこられたのは、体育倉庫だ。
「さ、入って」
「え…」
嫌な予感がした。
エリカが入り口で立ち止まっていると、若林さんの力強い手で腕を掴まれた。
「きゃっ、ちょっと待っ…」
そのまま強引に体育倉庫の中に押し込まれる。
重い音がして、辺りが真っ暗になった。
「なんで、出してよ!」
扉を叩くけれど、外から鍵をかけられたのか、全く動かない。
「ねぇ、哀れな子でも演じてるわけ?」
外から冷たい高千穂さんの声が響いた。
「あんたの自演なんでしょ?全部」
「な…、そんなわけ…」
声を震わせ、エリカが反論しようとした、その時。
「あたしこの学院に三億投資したのよ?!困るのよ、変な噂とかたつの!!」
扉の向こうなのにその迫力に圧倒されて、エリカは口をつぐんだ。
しばらく静寂が続いて、そのあと落ち着きを取り戻した高千穂さんの声が告げた。
「確かにあんたじゃないかもしれないわ、あれをやったのは」
思いがけない言葉にエリカは立ち上がる。
「それじゃああたしを閉じ込める必要なんて…」
一縷の望みに希望を託すが、その言葉もさえぎられた。
「結局、サイトウさんがいなければ、呪いなんて成り立たないのよ」
冷たい声。表情はわからないが、睨まれているのをひしひしと感じた。
「だから斎藤さん、悪いけど消えて頂戴」
足音が遠ざかって行って、暗闇の中、エリカは一人涙をこぼした。