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サキ
「どういうことなんだろう、犯人、って…」
リコに不可解な話を聞いた次の日、エリカは一人、廊下を歩いていた。
独りぼっちなのは心細いが、エリカの周りにはもう誰もいない。
「リコには犯人が分かってるってこと?」
リコは昨日、犯人を確認するために屋上に行った、と言っていた。
それは犯人の正体に目星がついていて、しかも屋上に行くということが分かっていた、ということではないか?
「ならどうして…はっきり教えてくれなかったんだろう」
まだ全く分からない事実が隠されている。エリカはそう感じた。
「あ、斉藤さん」
その思考が不意にさえぎられた。
振り向いてみると、井原サキがこちらに向かって歩いてくるところだ。
「高千穂たちが探してたよ」
菓子パンをかじりながら、ぶっきらぼうにサキが言う。
「えっ、そうなんだ、ありがとう…」
あまり喋ったことのないクラスメイトの名前を出されて、エリカは戸惑った。
「じゃ、教えたから。気を付けてね」
「えっ?」
最後の意味深な言葉に問いかけたが、サキはもうふらりと去っていくところだった。