ギプス
ひとしきり泣きじゃくって落ち着くと、たくさんの疑問がエリカの頭をかすめた。
「あの高さから落ちて、無事だったなんて…」
校舎は五階建て。助かるとは思えない。
エリカはあらためて二人を見た。
二人とも脚にけがをしているけれど、他に目立ったけがは見当たらない。
脚に固定されたギプスだけが、不必要なほどに痛々しい。
エリカの視線に気付いたキリノがギプスを軽く叩いてみせた。
「ちょっとヒビ入っただけらしいから、もうすぐ取れるでしょ」
リコが申し訳なさそうに顔を曇らせる。
それには気付かず、キリノは事のしだいを語り始めた。
「あたしらが落ちたとき、もう下に人形が吊られてたの、それに引っかかって…」
「待って、人形…?吊られてた、って…?」
話がのみ込めずエリカはキリノをさえぎった。
今度はキリノが目を丸くする。
「え、エリカは聞いてない?今度の騒ぎのこと」
「え、っと…」
豊橋先生が話していた内容を思い起こそうとする。けれど、見事なまでに思い出せなかった。
全然聞いていなかったなんて、とエリカ自身も驚いていた。
黙り込んでしまったエリカを見てキリノは首をかしげる。
「私が」
今まで黙っていたリコが急に口を開いた。
見たことのないような強い瞳をまっすぐにエリカに向けて。
「私が、話すよ」
思い詰めた声をはなった。