幼馴染
「油性ペンで書くとか、ありえないんだけど」
ぶつくさ文句を言いながらエリカ達が雑巾で机をこすっていると、だんだんクラスメイトが集まってきた。
「あの、私も手伝うよ」
「誰よ、こんなことやったの」
自分を気遣ってくれるクラスメイトの声に、エリカはちょっと泣きそうになる。
「あ、ありがと…」
まさか自分がこんなことをされるなんて、思いもよらなかったのだ。
普通に友達もいるし、嫌がらせをされるような覚えもない。
今まで特にいじめの話も聞かなかったし、これからもそうだと思っていた。
なのに…。
「それってサイトウさんの呪いってやつ?」
突如頭の上から降ってきた声に驚いて振り向くと、エリカの幼馴染の中川シヅキがいた。
エリカは水を得た魚のようにシヅキに飛びつく。
「シヅキ!聞いてよぉ」
「聞かなくても見たら分かるよ。誰だろうね、呪いなんか真に受けてる奴」
シヅキはゆっくりと辺りを見回した。
それに対して、エリカはシヅキを見上げて首をかしげる。
「呪いって?」
エリカの後ろでリコが大げさにずっこけた。
「今更かい?!」
シヅキはリコをちらりと一瞥しただけでエリカに向き直った。
「あんたも知らないクチか」
「うん、知らない」
エリカは無邪気にうなずいた。気が緩んで涙が零れそうになるのを取り繕うためだった。
シヅキはすべてを見通したような目で笑う。
「呪いの話説明すんの、今日で三回目かあ」