書置き
「あの…、シヅキ、知らない?」
ホームルームが終わってすぐ、エリカは柳の席へととんでいった。
今日もシヅキはまだ来ていない。
シヅキが遅いのはいつもの事だけれど…エリカの胸騒ぎはおさまらなかった。
「それがね、シヅキちゃん…、昨日から帰ってないみたいなんだ…」
「えっ?」
柳は言いにくそうに続けた。
「昨日友達と夕ご飯一緒に食べて部屋に帰ったら、部屋にこんな書置きがあって…」
差し出された紙には、見回りの先生が来たらごまかしておいて、とあった。
「シヅキの字…」
「結局帰ってこないまま十一時過ぎちゃって…シヅキちゃん、帰ってくるの遅い事よくあるから私、そのまま寝たんだけど…」
朝起きた時、シヅキのベッドには一切眠ったような跡が残っていなかった、という。
「そんな…」
「ごめんね、私、何にも気付かなくって…」
柳は申し訳なさそうにうつむいた。
その横でエリカは呆然と、差し出された紙を見つめている。
「柳さんのせいじゃないって!」
底抜けに明るい声が響いた。見ると、すぐ後ろにキリノが立っている。
「一緒に探そ、リカちゃん!」
リコが控えめに微笑んだ。
「ありがとう…」
不安を抱えながらも、エリカはキリノにうながされ立ち上がった…。