異変
四日目の朝、教室に入ろうとしたエリカは廊下で立ち尽くすクラスメートの姿を見付けた。
「どうしたの?青山さん」
声をかけてみるが、青山はおびえたように教室の扉を指さしただけだった。
「教室?」
エリカは不思議そうに扉を開けて教室を覗き込んだ。
謹慎がとけて一緒に登校していたリコもその後ろから覗き込む。
リコが、ひっ、と声にならない悲鳴を上げた。
「何、これ…」
教室は、真っ赤に彩られていた。
机、床から天井にいたるまで、大量の赤い絵の具を撒き散らしたかのように染められている。
「…血?」
吐き気がこみあげてきて、エリカはその場にうずくまった。
胃液がさかのぼって体の自由を奪っていく。
ぽた、と涙が一滴床に落ちた。
心臓が、どくん、と脈打つ。
赤い…血…誰が…何…これは…誰の、血液?
「斎藤さん…?どうしたの、しっかりして!」
不意にすぐ近くからリコのものではない声が聞こえて、エリカははっと我に返った。
立ち上がろうとして、ふらつく。
エリカが倒れる寸前で委員長の小林が駆け寄って支えてくれた。
もう一度、どうしたの、と聞こうとした小林が息をのむ音が聞こえた。
「え…」
すでに教室の前には人だかりができていた。あまりにも凄惨な赤に、気絶してしまう生徒もいる。
少し遅れて登校してきたキリノが、リコの肩に手をかけた。
キリノはおののきながら、ある一点を指さす。
「あれって…」
黒板の真ん中には、歪んだ真っ赤な文字の羅列があった。
” シライシサン ア ソ ボ ”