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夜の教室
「これで終わりね」
アリサは汚れた両手を振り、こびりついた赤いものを払おうとした。
「少し汚いけれど、仕方ないわ」
自ら作り出した、その空間をうっとりと眺めながらアリサは呟く。
「全てあの時のまま、ってわけにはいかないもの…」
恍惚の表情を浮かべながら、アリサは二、三歩と後ろに下がった。
「だけど、ありがとう。あなたのおかげで、あれにずいぶんと近付いた…」
「ねぇ、そっくりでしょう?中川さん…」
そう言って振り返ったアリサは、すぐに自分の間違いに気が付いた。
「中川さんは、もういないんだったわ」
アリサの背後の暗がりで、その言葉を聞いた誰かが笑った。