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柳さん
「柳さん!」
廊下でクラスメイトの姿を見付けて、エリカは駆け寄った。
「斎藤さん?」
柳は首をかしげる。斎藤さんに呼ばれるような事あったかしら、と柳は少し考えた。
長い髪がさらりと肩からこぼれる。
「シヅキ、今日まだ来てないの?」
「シヅキちゃん?…ああ、私が出た時にはもういなかったけど…?」
「え…」
エリカの顔から血の気が引いていく。
シヅキと同部屋の柳さんが出た時に、部屋にはシヅキはいなかった、それはつまり…。
「あれ、シヅキちゃん、今日来てなかった?…そういえば私、見てないかも…」
柳の呟く声を聞きながら、エリカは床がなくなっていくような不安に駆られていた。
「シヅキ…どこへ行ったの…?」