第六話 主
いらっしゃいませ。
叶え屋にようこそ。
さて、今日は何をお話しましょうか?
あぁ、主の昔話を聞きにいらしたんですね?
ではそこにおかけください。
私の知っている主の話を致しましょう。
昔々、神がみがまだ人の近くにいらした頃、一人の神が生まれました。
その神は人の願いを叶える力を持っておりました。
人々は己の願いを神に言い、神はそれを叶えておりました。
神は自分の力をよく理解していなかったため、言われるがままに力を使っていました。
それ故に人の欲望は膨れ上がり、争い事が絶えなくなりました。
幼さ故の過ちが人を悲しみの渦へと促したのです。
神がみはその神を一度は許しました。
幼い神も二度とそのようなことがないように姿を消してしまいました。
人に紛れて、本当に不幸な人にほんの些細な幸せを授けるほどの力だけ使って世界を巡り歩いておりました。
しかし大きな幸せを欲しがるのが人と言いましょうか。
傲慢な人達は幼い神を追いかけまわしました。
幼い神は人からのがれるため、本当に叶えてほしい願いを持つものだけが来る場所を作り、姿を見せる事なく過ごし始めました。
これのどこが主の昔話かわからない方もいるでしょう。
主の名前は
「杏」というのですが、あの幼い神も
「杏」というのですよ。もう、お分かりでしょう?
そうなのです。
我が主は幼い神、だったのですよ。
もう、古い古い昔の話ですが。
あぁ、話し込んでしまいましたね。
お忙しい時間をこのような昔話に付き合っていただきありがとうございます。また、お暇なときにいらしてください。
足元にお気を付けてください。
それでは、またのご来店を心からお待ちしております。