第五話 住人
久しぶりにお客さんが来たらしいですね。
お迎えをして差し上げなくてはいけませんね。
さぁ今日の願いはなんでしょう?
ここは叶屋。願いを叶える店。
あなたの願い叶えます。
今日のお客さまはどうやら訳有りのようですね。これはかなり、骨の折れる仕事になりそうです。
さぁいらっしゃいませ。
ようこそ。
叶屋へ。
おやおや今回のお客さまはなんて可愛らしい御方なんでしょう。
えぇ、純白の毛並みの子猫ですよ。
彼女の名前はエリというらしいですね。
なぜおわかりですかって?
叶屋には色々なお客さまがきますから。
自然とできるように、わかるようになるのですよ。
エリ様はお腹が空いているようですね。
暖かいミルクをお出ししてあげましょう。
さぁ、おいでなさい。
あなたの願いどおりしばしの安息をもたらしてあげましょう。それが主人に捨てられたあなたの願いでしょう?
願いをもつものはすべてお客さま。
それが悪魔であろうが神であろうがここにきたものはすべて願いを持ったお客さまなのですから。
願いをもたぬものが立ち入ることのできないお店。
それがこの叶屋なのですから。
さぁ、召し上がれ。
冷めないうちに暖かいミルクを。
凍えないうちにしばしの安息を。
「にゃー。」
だけど、対価はちゃんと頂きましたからね。
エリ様。
主人もあなたが気に入ったようです。
ここで暮らしてみませんか?
くるもの拒まず、去るもの追わずの叶屋ですから。
どうですか?
エリさま。
「にゃー」
どうやら新しい家族ができたようです。
可愛らしいエリという女の子が。
さて、今度はどんなお客さまがお越しになるのでしょう?
今度は主人についてすこしだけお話をいたしましょうか?
いや、もう時間がないようですね。
主人の昔話はまた今度にしましょう。
それではお気を付けてお帰りください。