女神の慈悲
中等部三年、卒業パーティー。
それは、卒業生にとっての一大イベントである。
「まぁ!麗様美しいですわ!」
「さすが、麗様ですわ!」
麗の登場で、会場は一気に賑わう。
肩が大きくあいたドレスを身に纏う、麗。美しい白い肌がめにつく。いつもの縦ロールを、今日は上でまとめあげておりやけにオトナぽい。
彼女ひとりだけ何故か中世っぽいのは、雰囲気だ。
麗のまわりには、たくさんの女子がとりかこむ。そんな中、遠くでガシャンと大きな音が響いた。
「これだから、庶民は」
ととあるお嬢様は呟いた。彼女は、麗を敵対視するお嬢様だが敵対視されている麗はというと、そんなことも微塵に感じていない。
「まぁ、どうしたのかしら?」
そう、麗が呟けば周りのお嬢様たちが情報を口にする。
「田中さんですわ。田中さんが、あの方にぶつかったみたいですわ」
あの方というのは、麗を敵対視するかのお嬢様だ。
そして、田中さんとは特待生として入学してきた一般家庭の娘だ。
彼女は、普通のワンピースを身に纏い出席していた。このパーティーは、強制参加だからしょうがないのだ。
麗は、ぶつかって床に座り込んだ田中芽衣に近寄った。彼女は、もっていたらしいジュースをワンピースにかけてしまったらしくびしょ濡れだ。
「お怪我はないかしら?田中さん」
「…!う、麗さま……」
麗が話かけたことでびっくりした彼女は麗を見上げた。
「さあ、お立になって?お召し替えしなくては、いけませんね…」
そう言って、手をさしのべる。その手をじっと見つめる田中芽衣。そこに、突如声がかかる。
「麗様は素晴らしい方よ。あなたが思っているような人ではないわ!」そう、数年前までは青竜院雅人をおっかけてた庶民と罵られていた一人の山中さんだ。
「山中さん…?」
「…ふふ」痺れをきらした麗がそっと田中芽衣の手をつかんで立ち上がらせると引っ張りパーティー会場から連れ出す。
「私は家柄もあって、こういう場に頻繁に行きますの。大抵立食ですからこういうこともあってはおかしくないの。だから、着替えももっていくんですの。私の着替えですけれど、卒業パーティーですもの。楽しみましょう?」
そういって、去っていった2人が戻ってきたとき会場はもっとにぎわいだ。
お召し替えをした、麗と田中芽衣の登場。
なぜか麗も着替えており、その2人の格好は姉妹のようだった。地味だった田中芽衣が、美しく変身したことでよけいに賑わうきっかけとなった。
「ふふふ、芽衣さん。楽しみましょう?」
「はい!麗さまっ」
そのシーンをみていた、一人の青年は
「………あーもう、あの首もと噛みつきたい…じゃなくて、……麗…優しいやつ…」
変態がひとり悶絶していた。かといって、あまり変な行動は出来ない。なぜなら、多くの女子に囲まれているから。
「麗さまは、女神ねぇ…」
「どんな人にも優しいですもの、女神がぴったりですわ」
「…ふーん。どんな人にも…か。」
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