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「オイ、ラッシー。そろそろこの街ともオサラバすっぞー」
「そりゃマジか?ウッド。まだこの街にはオイシイ単車もチューニングカーも眠ってんぞ」
港の倉庫で、二人の男が話している。彼らの周りには倉庫いっぱいのバイクや車。それらは形を残しているものもがるが、中には鉄屑としか思えないような残骸もある。恐らく、売れるパーツだけ外された残りの部品たちだろう。
ラッシーと呼ばれた方はかなり屈強な男で、プロレスラーと言われても頷けるどころか、レスラーの中でも大型の部類に入る。体は厚く腕は太い。手の甲には炎の刺青が入っていた。
ウッドと呼ばれた方は、体格は普通だが、服装は不良的で、アクセサリーは一つひとつが大きくやはり不良的だ。俗にいう、ヤンキーである。
「段々オレらんこと噂になり始めてる。オレらがパクった車のチームも動き出してるしよ。そろそろガラ躱さねぇとヤベェ」
「いいってのによ、別に。どんなチームが来ようが、俺が全員ぶっ飛ばしてやんのによぉ」
「まぁ、ここじゃなくてもお宝は眠ってんだろ?今夜、この倉庫の片づけして、明日の晩には違う街に行くぜ」
「わーったよ」
二人が話していると、そこに更に三人の男が入ってきた。彼らは二人と同じような部類の人間で、盗賊団のメンバーである。
「おーし、全員揃ったな。とりあえず今日はここにある売れるパーツ全部バラして、この倉庫綺麗にすんぞー」
ウッドが大きな声で叫ぶ。残りの四人はそれに呼応して、声を上げた。それぞれにスパナやメガネレンチを持ち、パーツに向かっていく。その内の一人は、溶接をするべく腰を下ろした。
その時―
ガラララ バン!
「オウ、テメーら元気してっかー?ちっとツラ貸せやー」
時間が、止まったと錯覚するくらいだ。そのくらい、全員がそこで止まった。春一の後ろに控える夏輝が唯一、ため息を吐いた。それだけが時間が止まっていない証拠だった。
「トーゾクさん達、おとなしく捕まっときゃ、痛い目は見なくても済むぜ?」
にやりと嗤う春一に、盗賊団の内の一人が彼の前に立ちはだかった。手にはモンキーレンチを持ち、それを春一に振りかぶらんばかりの勢いで威圧的に凄む。
「ガキ、死にてーんなら手ぇ貸すぜ?」
そんな男にも春一はいつもの通り全く動じず、人を食った笑い顔で彼に対した。
「俺がガキならアンタは大人かよ?」
「アア?何当たり前なこと言ってんだ、ガキが。何が言いてー」
「いや、大人にしてはセコイ稼ぎ方すんなーと思ってよ。ガキでももうちっとマシな稼ぎ方すんぜ」
「おもしれーぞ?テメェ…!」
レンチを振りかぶった男がそれを振り下ろす。しかし、それが春一の頭部を捉えるよりも先に、春一のアッパーカットが男の顎を砕いた。
仰向けに倒れた男の口からは、血がダラダラと流れている。周りのメンバーは、何も言えない。
「テ、テメー!オレらに一人で喧嘩売ろーってか!」
ようやく口を開いたウッドに、春一はアハハと笑って倉庫の中へ一歩入った。
「あのね、喧嘩ならもう売ってるし、一人じゃない。夏もいるでしょ?お前らには夏が見えないの?お前、いつ幽霊になったんだよ」
後ろを見て夏輝に問いかける。彼はいつものごとく溜息を吐きだして、前髪を掻き上げた。
「死んだら成仏したいですね」
「お前みたいな根暗は幽霊になりそうだけどな」
「ハル、根暗は怒らせると意外と怖いんですよ?」
口をヒクつかせる夏輝よりも、ウッドは更に口を歪めて叫んだ。
「無視してんじゃねーぞコラァ!」
「それに…二人でもねーんだぜ?」
叫んだウッドに、春一は自信満々の笑みでそう答えた。すると、春一の背後から更に二人が現れた。
「俺らはユーレイじゃねーゾ?」
「ちゃんと、足あるからね」
現れた丈と琉妃香に、盗賊団の顔が歪む。
「さて、全員揃ったぜ?これで人数は対等だな?」




