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三人がそれぞれの講義を終え、駐輪場に集まった。それぞれのバイクに火を入れ、暖機をしながらルートを相談する。
「今日はホワイトロード流すかー」
「オッ、いいネ。アメリカンには持って来いの道だよナ」
「あたしもあの道好きー。じゃあ、決まりね」
ホワイトロードというのは、数珠市にある山々の内のひとつにある道の名前である。緩やかなカーブと真っ直ぐな道路が連続する道で、春一達アメリカンタイプのバイカーがよく集まる場所である。
「じゃあ、行くかー」
エンジンが温まったことを確認して、春一、琉妃香、丈の順で大学を出た。そのまま千鳥走行をしながら、山の麓まで行く。大学から山の麓までは約三十キロほどだが、既に手は凍えている。いくらウィンターグローブをはめても、グリップヒーターをつけても、寒さは徐々に手の感覚を奪う。
それほど高くない山だが、山頂まで行くには更に十キロを要した。しかし、そこには休憩所である東屋とジュースの自動販売機がある。温かい缶コーヒーでも飲みながら休憩をするため、春一達は休憩所の駐車場にバイクを停めた。
「さっみー!マジで寒いっていやマジで」
「そんなのわかりきってんヨ、ハル」
「寒いって言うなよー。余計寒くなる」
寒さによって震える手で財布から小銭を取り出し、販売機の中に入れる。温かい飲み物でまずは手を温める。
「あったけぇ~」
「はァ~生き返るワ~」
「ここに足湯でもあればもっと最高なのに」
三人が東屋の椅子に座り、休憩していると下の方から道を上がってくるエンジン音が聞こえた。複数台のバイクの音で、耳を澄ませると三拍子の独特の音が聞こえた。
「ハーレーの音だ」
春一が言うと、ちょうど駐車場にハーレーが四台、入ってきた。その四台がエンジンを止めると、辺りはひっそりと静まり返った。
「カッケェ~。やっぱハーレーはソフテイルファミリーだよな」
「バッカ。ハル、何もわかってねーヨ。ハーレーつったらダイナファミリーだロ?」
「お前らダメだな~。やっぱパパサン系だって」
春一達が話に花を咲かせていると、ハーレー乗りの四人がこちらにやってきた。やはり同じように缶コーヒーで暖を取っている。
「こんばんは。あのドラスタとかって、兄ちゃん達の?」
「こんばんは。はい、そうっす。ドラスタが俺で、シャドウがコイツ。んで、スティードがこの子っす」
「イカスな、あのシャドウ。アップハンが決まってんじゃん。オレもハーレーの前はシャドウ乗ってたんだよ」
「あざっス。俺、あのアップハンはこだわってんすよ」
「ってか何、あのスティード女の子が乗ってんの?」
「はい、あたしのです」
「カッコイイ~!」
「ありがとうございます」
春一達三人とハーレーチームの四人はすぐに意気投合し、寒さを忘れて語り合った。同じ趣味を持った者同士、分かり合うのにそんなに時間はいらない。
缶コーヒーの中身も冷たくなり、再び寒さに震えだした頃、ハーレーチームが席を立とうとした。もうお開きの時間だ。
「おう、んじゃ兄ちゃん達、暗いから気を付けてな」
「あ、はい。お気をつけて」
「ああ、それとあれだ。バイクも盗まれないように気を付けろよ。最近多いんだよ。後、ナンバー」
「ナンバー?」
春一達は眉根を寄せた。ナンバープレートがどうかしたのだろうか。
「最近よ、ナンバープレートが盗まれる事件が多発しててな。オレらのツレも一人やられてよ。ったく、ナンバープレートなんて盗んで何するんだか。ただの愉快犯だろうが、メーワクな話だよな。何せナンバーないだけで走れねぇんだもんよ」
「バイク盗むなんて最低な野郎っすね。わかりました。気を付けます」
「オウ、んじゃ、縁があったらまた」
そう言い残して、四台のハーレーは漆黒の闇の中を駆けて行った。春一達はとりあえず家に帰ることでまとまり、そこで流れ解散となった。




