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次の日、昨日の一件でひどく機嫌が悪い春一を横目に見ながら、ネルロは彼の隣を歩いていた。近所のスーパーへ買い物に来ているところで、春一は依頼人の前だというのに不機嫌なオーラを隠そうともしていなかった。ネルロにしてみたら何故春一がこんなに不機嫌なのかわからないので、まさか自分のせいではないかと不安になる所である。
「あの、春一さん?」
「何でしょう」
舌打ちが聞こえてきそうな声音だが、ネルロは勇気を振り絞って次の句を継いだ。
「もうすぐ昼ですし、どこかでご飯を食べませんか?このスーパーにあるパン屋さんのサンドイッチ、すごいおいしいんですよ」
「ええ、そうしましょう」
そっぽを向いたまま言う春一に、ネルロは小さく溜息をついてケチャップを買い物かごに入れた。
買い物を済ませたネルロと春一は、パン屋でサンドイッチを買ってスーパーの外に出た。今日は晴天が広がり、昼食を外で取るにはもってこいの陽気だった。
「どこへ行くんですか?」
春一は前を歩くネルロに問いかけた。スーパーの前のバス停からバスで五つ目の停留所、そこから森の奥へと歩いていく。森の木々はうっそうと茂り、先程までの青い空は重なった葉のせいで見えない。
「もうちょっと先ですよ。そこに、ちょっとした公園があるんです。そこが僕のお気に入りの場所なんですよ」
「へぇ。じゃあ、もう少し我慢しよう」
それから、五分ほど黙って歩いた。すると、前を歩いていたネルロが急に立ち止った。すぐ後ろを歩いていた春一は危うく彼の背中にぶつかる所だった。
「ネルロさん、どうしました?」
「いやぁ、ちょっと、喉が渇きましてね。少し、水を飲んでいいですか?」
「構いませんよ」
ネルロは買い物袋を入れていたリュックの中から水のペットボトルを出して、キャップを開けた。そしてそれを春一の方へ向けた―刹那、その腕を春一が掴んだ。
「その水を俺にかけて、目を瞑ってる隙に斬り捨てようってか?フレイムさんよぉ」




