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「今日ハルの番ナ」
「わーってるって。俺今日はこれで終わりだから、行ってくるよ」
「いってらっしゃーい」
丈と琉妃香にひらひらと手を振り、春一は大学の教室から出ていった。春一は午前の講義で今日のスケジュールは終わるため、藤に頼まれた事件の捜査へと繰り出した。
今日で見張りを始めて二週間になる。春一達が通う北神大学から南に八キロほど行くと、一件のコーヒーショップがある。この地区に多いチェーン店で、遅くまで営業していることとリーズナブルな価格が人気の店だった。
春一達は毎日交代でこの店に通った。今日は春一の番だ。
春一は駐輪場に自らのバイクを停め、店内に入った。
「いらっしゃいませ」
爽やかな若い男性の店員が笑顔で春一を迎えた。春一は窓際の禁煙席を選んで、そこに座った。ショルダーバッグから本を取り出し、テーブルに置く。ブレンドコーヒーを注文して、本を広げる。学術書だ。レポートに忙殺されるのではないかというくらい課題が多いので、いくら見張り中といっても勉強をしないわけにはいかない。
春一は時折メモを取りつつ、その本を読み進めた。読み終わると、今度は要点をノートにまとめ、レポートの中心となる部分を書きだしていく。時計を見ると午後五時だった。レポートの芯に肉づけをしようかというとき、春一の目に一人の店員が映った。
店員は三十歳前後くらいの外見で、中肉中背、これと言って特徴のない顔つきだった。黒いエプロンをかけ、客に対して丁寧な応対をする。笑顔を振りまき、機敏な動きで仕事をこなしていた。しかし、そんな彼こそ、藤が追っている指名手配犯だった。
藤が追っている指名手配犯は、名を平良大介という。五年前の強盗殺人の罪で全国指名手配になっている。顔は手配写真と変わっているから、整形したという藤の話は本当だろう。
春一は勉強をしているふりをしながら、平良の様子を窺った。そして彼が水を注ぎに店内を回っている時を見計らって、手を上げた。
「はい、ただいま」
「ウインナーコーヒー、追加で」
「かしこまりました」
一礼して去った平良は、やはりきびきびと仕事をこなしていた。




