43話 VS魔女狩り部隊
正面から迫り来る騎馬達が土煙をあげている。
生き物が本能的に恐怖を抱くほどの轟音が響き、地面が揺れている。このままではここに立っているだけでひき殺されるだろう。
深呼吸し、覚悟を決めると騎馬に向かって走り出した。
まずは突撃の速度を削るため先頭集団の馬に狙いを定める。あと50mほどまで迫ると、ありったけのナイフを馬目掛けて投げた。
先頭を走る馬が数頭倒れ、落馬した騎兵も含めて後続の馬とぶつかり、集団での突撃の威力が落ちる。
「さすがに全部は倒せんか・・・」
ナイフをかわした騎兵が抜刀しこちらに向かって剣を繰り出してきた。
黒剣で受け流しつつ馬の足を刈る。これを繰り返し完全に騎馬隊の勢いを無くした。
「さてここからが本題か・・・」
見渡すと馬から下りた兵士達によってぐるりと囲まれている。
「よくもやりやがったな!!異教徒が!!」
「貴様を切り刻んだあとすぐに魔女共も刻んでやる!!」
「貴様1人抵抗した所で無意味だぞ!!関所の反対側には別働隊が向かっている。たとえ関所を抜ける事が出来てもすぐに捕まる!!」
(関所の向こうということはフェブ達もいるはず、頼むぞみんな)
剣を一度地面に突き刺す。周りの兵士は俺が諦めたと思ったのか、緊張感が緩んだ。
「悪いがもう少し足掻かせてもらうぞ」
篭手を締め直し、軽く肩を回してストレッチすると剣を持った。
それを見て再び全体に緊張感が宿る。
「馬鹿な奴め、魔女なんかを助けようとするからこうなるのだ。
奴を殺せ!!総員突撃ーーー!!」
隊長っぽい奴の号令で一斉に兵士は距離を詰めてきた。
背中からの攻撃を避けるため一直線に正面に向けて走り出す。
それからは乱戦が始まった。魔女狩り達は全員が回復魔術を習得しており、多少の傷はすぐに回復してしまう。そのため確実に息の根を止める必要がある、しかしトドメをさそうとすると仲間が現れかばうため、なかなか数が減らない。
「くそっ、このままじゃジリ貧か・・・」
ようやく10人目を切り捨て、崖に背を預けて息を整える。しかしこちらの休憩は許さないといわんばかりに次々と別の兵士がかかってくる。
「ちょっとは休ませろっていうんだよ!!」
これだけの人数差があると1人1人を相手にしてられないため常に動き回りつつがむしゃらに剣を振り続ける。
結果、体より先に剣に限界がやってきた。まず先に強度に劣るドラゴンキラーにヒビが入り、敵を唐竹割りにした瞬間折れてしまった。
「くっ、すまん。俺が未熟なせいで・・・今までありがとう」
折れた剣を目の前の兵士に投げつけ目潰しにし、怯んだ隙に首を落とす。
黒剣も感覚的に限界が近いのはわかる。しかし敵はまだまだいる。
「・・・いくぞ相棒!!ウオォォォ・・・」
両手で黒剣を持つと力を振り絞るように叫び、突撃した。
剣の負担を減らすため紙一重でかわし、カウンターで鎧の隙間を狙う。
集中力を高めていくうちに周辺の景色がゆっくりと見え始め、後ろの敵の動きまで把握できるようになっていった。
(何だ、これは・・・)
敵の攻撃を余裕を残しつつかわし、心臓を一突きにする。後ろから斬りかかってきた敵を振り向きざまに首を切り落とす。
敵は急に動きがよくなった俺に若干距離をとった。
(何だ・・・頭が痛い)
『その頭痛はな、お前の限界が近いのさ。このゆっくりと動く世界は戦鬼の力の一端だよ。鬼を否定し、受け入れないお前だが命の危機に際し鬼の力を引き出したんだ。
しかし、鬼の力を使うには俺を受け入れなくちゃな~。お前だけじゃ鬼の力による負荷に精神が保たないんだよ。
結果脳が危険信号として頭痛を発したって訳だ』
夢に出てくる鬼の声がどこからか聞こえてくる。
あまりの頭痛に考えることができない。目の前が赤く染まり、手が震え、足元がふらふらしてくる。
『ここまでのようだな~。じゃあ・・・交代だ。本当の鬼の力の使い方を教えてやるよ。お前は精神の奥深くで眠っていな』
立ってられず膝をつき、瞼を閉じ鬼の言葉を聞く。
(そうか・・・ここまでか・・・すまないアプリ、みんな)
それを最後に俺の意識は深い暗闇の中に沈んでいった。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます




