3話 店番と初めての愛剣
話がなかなか進まない・・・
まとめが下手だなぁ
カレンさん、デイリーさん夫婦と暮らし始めて1年がたった。訓練という名の拷問にも大分なれ、力のコントロールが安定してきたので、暇を見つけてはカレンさんの店(魔女の秘薬の販売)の手伝いをするようになった。
「回復薬や呪いの治癒薬はわかるけど、髪染めや日焼け止めは秘薬なのだろうか?
うわっ、こっちには惚れ薬や媚薬、精力剤まであるぞ・・・売れるのかな・・・」
カレンさんとデイリーさんが薬の原料を狩り(・・・)に行っている間の店番をしながら僕は呟いた。
この街に住み着いてから僕達は2人のこれまでに稼いだお金と一部借金をして一軒家を買った。冒険者の収入はギルドで依頼をこなして受け取るのだが、拠点を決めて活動すると、遠距離の護衛任務や害獣駆除などは受けにくく安定収入が得にくいらしい。そのためカレンさんは魔女の秘薬を作り、家を改築した店舗で販売する事で安定収入を得ることにした。
デイリーさんは冒険者として街の周囲でできる依頼をこなしつつ薬の原料を集めて、合間に僕に訓練を行い、僕はひたすら訓練メニューをこなし続けた。
そして僕に余裕が出来てくると僕に店番などを任せて2人で狩り(デート)に行ったりもするようになった。
「結局、今日一番売り上げあったのが惚れ薬ってどういうことだよ・・・」
カレンの薬は副作用なども無いようにわざと弱い効果しか無いように作ってあるらしい。
特に惚れ薬なんかは顕著で使うと何となく会話が盛り上がるだけだそうで、飲み屋のお姉さん達がよくお客さんに盛るのに買っていく。
今日も店で使うからとまとめ買いしていったので我が家の家計は大変潤っています。
「さて、在庫も無くなったし、掃除して閉店しよう」
看板をしまい、掃除をしながら今日の修行について思いを馳せた。
「基礎トレーニングは朝のうちに済ませたし、デイリーさんもいないから、剣術の型でもやろうかな・・・」
掃除を済ませ、まだ夕日を眺めながら素振り用の模造刀を持って庭に出たら、ちょうどデイリーさん達が帰ってきた。
「おかえりなさい、早かったですね」
「ただいま、ジャン。お店は閉めたの?」
「はい、在庫が切れてしまったので、ちょっと早いのですが片付けました、荷物持ちましょうか?」
カレンさんに微笑みかけられながら僕は返事を返した。敬語になってしまうのはまだ慣れて無いからです。
・・・カレンさん綺麗すぎて緊張しちゃうんだよね。
「荷物はいいわ、それよりもお店たたんであるなら丁度良かった。すぐに買い物行くから準備して」
カレンさんはそう言いながら、重そうな背嚢をお店の奥の工房に運んで行った。
「お前と出会ってから一年たったお祝いだ。プレゼント買いに行くぞ」
そう言ってデイリーさんは重そうな背嚢を背負ったまま肩を叩いて来た
「・・・ありがとう!!すぐに準備してきます!」
急いで部屋に戻り剣を置いて上着を着て戻ると2人も準備を終えて待っていた。
「お待たせしました。どこへ行くんですか?」
「行けばわかるよ、さあ行こうか」
背嚢をガチャガチャと背負いなおしてデイリーさんが歩き出したので慌ててついて行った。
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・・
・・・ここはダーハム武具店?
「ジャンもそろそろ自分の剣を持ってもいいかなと思ってな」
デイリーさんがそう言いながら店内に入って行った。
「ダーハムいるか?」
「おう、らっしゃい!久しぶりだな、デイリー。そろそろガキの1人や2人こさえたか?」店の奥から小柄で筋肉質な体をもつ髭で顔の殆どが隠れた男性が出てきた。
「久しぶりだなダーハム、そのことだが、今日は自慢の息子を連れてきた。ジャン、こっちにおいで・・・こいつはダーハム昔パーティを組んでたことのあるドワーフの戦士だ、嫁さんが身ごもったから冒険者をやめて、鍛冶屋としてこの街に定住した。
ダーハム、こっちは俺たちの息子のジャンだ。今日はジャンの剣を作って貰おうと思ってな」
「ジャンです。よろしくお願いします」
「ダーハムだ、よろしくな坊主」
そう言ってニカッと笑いながら握手を交わした。
ドワーフ・・・山の民とも言われ火と土の精霊に愛されているため生まれつきあらゆる鉱物の声が聞こえ、なんとなくで加工が出来るらしい。また小柄で身長が140cmほどしかないが、力が強く、戦場では自分達で鍛えた強力な武具を用いて活躍する戦士が多い種族だ。難点は大酒飲みで怠惰で喧嘩っ早い性格のものが多く、せっかくの才能を磨かずにいることがある。
ドワーフが作った武器は品質が高く、頑丈に出来ており冒険者に人気が高い。またダマスカス鋼やオリハルコンなど加工の難しい金属も扱える唯一の種族である。
「しかし、ずいぶんデカいガキだな。お前いつの間にこんな子ども出来たんだ?
坊主お前何歳だ14~5ってとこか?」
「今年で8歳になります」訝しげに聞くダーハムさんに店番用の最高の笑顔で答えてみる。僕は今160cmあるからそりゃ誤解するよね。
「!!まさか、その髪と眼・・・おめぇ戦鬼か!?どういうこったデイリー!」
「お久しぶりねダーハム、どういう事も何もこの子は私たちの大事な息子よ、それ以上でもそれ以下でもないわ」
カレンさんがそう言いながら店内に入ってきた。
「う、カレン久しぶりだな。
・・・おいフェブちょっとこっち来い!!」
カレンさんの笑顔にたじたじになりながらダーハムさんは店の奥怒鳴った。
すると奥から更に小さな80cmくらいのドワーフが歩いて来た。
「何~父ちゃん」
「おう、ちょっとこっちの坊主とあっちで話して来い。
デイリー、カレン詳しく話せ」そう言って3人は話はじめてしまったのでフェブと呼ばれた子に話しかけてみる。
「はじめまして、ジャンです。8歳の戦鬼です」
「はじめまして~。フェブっていいます。同じく8歳のドワーフです。一応この店の見習いです。俺、戦鬼って初めて見るよ!兄ちゃんいい体格してんな~、やっぱ強いのか?今日は武器作りに来たのか?俺に作らせてくれよ~頑張るからよ~」
ニコニコと一気にまくし立てながら体によじ登って来たフェブを落ちないように支えながら僕は苦笑した。
この街に来て初めて同年代の友達が出来た瞬間だった。
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・・
・・・
それからしばらくして3人の話し合いが終わったのでダーハムさんに呼ばれた。
「おう、待たせたな坊主、おめぇも大変だったんだなぁ~。最高の武器作ってやる!取りあえず何が欲しい?」
「あぁその事だが、取りあえず今は剣の鍛錬をしているから長剣と篭手、あと軽鎧も作ってくれ、成長期だから防具はすぐに小さくなってしまうからサイズをすぐ直せるようになめし皮と対魔防御の高い飛竜の鱗を合わせて、剣は魔術に干渉出来て頑丈な黒鉄で作ってくれ。
材料は持ってきたから、後の重心などはまかせる」
そうデイリーさんは言うと持ってきた背嚢を開けて中身を見せた。
「おう、竜鱗に黒鉄鋼に、これは・・・魔狼の皮か。これだけあれば十分だ、釣りがでるよ。よし坊主、体測るからこっち来い。
あとデイリー、相談なんだが息子のフェブに経験積ませたいから余った材料で短剣作らせていいか、坊主のサブ武器にでもしてもらえないか?」
「それくらいならいいぞ。使い心地聞きたいんだろ。いいもの作ってくれ」
2人の話を聞きながら肩の上を陣取ってるフェブは目をキラキラさせている。
そのまま腕の長さ、手のサイズを測ったり、模造刀を用いて重心の位地を調べたり、手形をとったりした。
一通り測定が終わったら完成は5日後と言われ、店を出た後3人で晩御飯を食べに行くことにした。
そして食後、家に帰る途中デイリーさんはポツリポツリと話し始めた。
「俺は元々孤児でなファミリーネームは無かったんだ。だがカレンに出会い、ダーハムや他の仲間と出会い、パーティを組んだ・・・俺達のパーティは人間、魔女、ドワーフやエルフ等の様々な人種の集まったでな、その仲間達は俺にとっては初めて出来た心許せる友であり、家族だった。それら様々な種族が一緒になって、どんな荒波も越えていく事を願い、パーティの名前をアーク(方舟)と名乗り始めたんだ。そして、お前も今は俺達の息子であり、同じ船の乗員だ、もっと打ち解けてきなさい。
胸を張って自分はジャン・アークですと名乗りなさい」
思っていたことを話しきったのかそれきり黙って歩き始めた。
「はい・・・・・・父さん、母さん(ボソッ)」
父さんの言葉が嬉しくて照れ笑いしながら、返事をしてみる。まだ照れくさいので小声になってしまう。
「今、父さんって言ったか?」
「今、母さんって言った?」
小声で言ったのにしっかり聞いていたらしい2人はいきなり振り向いた。
「うん、これからもよろしく、父さん、母さん」