32話 VSバジリスク
休憩を終えて、再び探索を開始した。
「帰りの時間を考えて、後5時間で行けるところまで行こう」
「たぶんそんなにかからずに最深部まで行けると思うぞ~。鉱石の気配が濃くなってきた。この先に手付かずの鉱脈があるみたいだ」
「・・・兄貴」
「どうした?マイト、敵か?」
「いや、近くにはいないけどなんか奥から嫌な感じがするんだ。気のせいかもしれないけど」
「・・・みんな警戒して進むぞ。マイト何か気づいたらどんどん教えてくれ」
それからは警戒しながらも再び続く下り坂を降りていく。
「なんだぁ、えらく静かだな・・・」
「魔物がいない?」
「兄貴、やっぱり何かおかしい・・・昨日まではあった迷宮蟻の気配まで無い」
「ジャンさん・・・ヒスイが奥からとても禍々しい気配がすると言ってます。近づかない方がいいのではないですか?」
確かに何だか嫌な気配がする・・・
「もう少し様子を見て、もしヤバそうなら全力で逃げよう」
そこから更にしばらく進むと広いドーム状の所に出た。
「また広い所に出たな・・・」
「ジャン・・・何だか奥から物凄い魔力を感じます」
アプリは震える体を抑えつけている。
「兄貴!!前方から魔物!!でかいのが・・・とにかく沢山くる!!」
マイトが焦りながら報告してくる。それを聞いたみんな無言で武器を構え坑道の先を睨みつけた。
暗闇から姿を現したのは緑色のウロコに4本の足、瞳は金色で口からは鋭い牙がのぞく。
「バジリスクだ!!目線を下げろ!!」
俺の怒声でみんな一斉に地面を見た。
バジリスクとは亜竜に属し、頑丈なウロコを持ったオオトカゲである。その力はかなり強く噛みつかれたら鎧など有って無いようなものだとか。しかし真に恐ろしいのは牙に仕込まれた猛毒と石化の魔眼である。牙の毒は普通の毒消しでは効果が無く、バジリスクの牙から作った解毒剤を使わなくては確実に死に至る。また石化の魔眼は目のあった物を石化させる呪いがかかっている。
「とりあえず3匹か・・・フェブお前バジリスク倒せるか?」
「戦ったことねえよ。しかしやるしかないだろうなぁ」
「仕方ない、やるか!!
俺が1匹はやる残りはみんなで頼む。目をあわすなよ、マイト。スピードで攪乱してやれ。
アプリ、ユリ、ジュネ!!3人は距離を取って牽制、バジリスクのウロコは矢や魔術は通しにくいから無理して倒そうとせず隙を作ってくれ。
フェブ、そっちは頼むぞ
行くぞ!!」
一斉にバジリスクに走り寄っていく。
目線は上げずにバジリスクの足もとを見る感じで近づき後はひたすら回り込んで顔の前に立たないように動く。
剣での一撃はウロコに阻まれ余り効かないようだ。常に動きまわり体重を剣に載せきれていないようだ。
「固いな・・・ならば腹はどうだ」
腹のしたからすくい上げるように切り上げる。
ギャアアァ
腹のウロコはやはり柔らかく剣が食い込んだ。
「これで終わりだ!!」
一度剣を引き抜き動きの鈍ったバジリスクの首を龍断ちで切り落とした。
「よし、みんな無事か!?」
振り返るとそちらではまだ戦闘が続いていた。
「くそっ!!固ぇな」
フェブが加速状態でバジリスクに斧を叩き込むがウロコに邪魔されて刃が刺さらない。
「フェブ!!離れて下さい。彼の敵に降りかかれ重力の網。『グラビティ』」
アプリの呪文に合わせてバジリスクの上から見えない力がかかり潰れるほどではなくとも動きが鈍くなっている。
「フェブ!!今です!!」
「おうよ!!」
フェブは斧をしまい背負っていたハンマーをだすとバジリスクの頭に全力で振り下ろした。重力の加速を加えたハンマーの一撃はバジリスクの頭を砕いた。
マイト達の方を見ると丁度戦いが終わるところだった。
ユリの精霊術により足元を凍らされたバジリスクの両目に矢が刺さり、マイトの締め技が極まっている。
「何とかなったな、ジャン」
「みんな怪我はないみたいですね・・・」
アプリとフェブが話しかけてきた。
「しかし何故こんな初級者向けダンジョンにバジリスクが・・・」
このダンジョンは養成所の授業でも用いられるような初級者向けの物であまり強い魔物は出てこないはずである。
またバジリスクは群れないはずなのに今回同時に3体あらわれたこともおかしい。
「あ、兄貴・・・前方からさっきと同じ足音が沢山」
「っ!!退くぞ。
マイト先に行け!!俺が殿で時間を稼ぐ。フェブそっちの指揮は任せた」
「おう!!出口で会おうぜ。
よっしゃ~走れ走れ!!」
「ジャン・・・気をつけて」
「ああ、アプリも出口で待っててくれ」
みんなが走り去って行くのを横目に剣を構え奥を睨む。
「さて、ここは通さんよ」
暗闇からバジリスクばかり10匹以上出てきた。
初めての撤退戦が始まる。
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