2話 修行
新しく家族が増えて1ヶ月たった・・・僕は今とても後悔しています。デイリーの修行は尋常じゃありませんでした
ある日は・・・
「ほらほら、足を止めるな走れ走れ、どのような状況でも心を静めて鬼の力を抑えろ。顎を上げるな、剣を引きずるな腕を上げろいざという時に反応できんぞ。
もっと速く速く速く速く・・・
後、街の外周3周して来い。急げよ、飯に遅れたらカレンが怒るぞ」
フラフラになりながら家に帰ったらすっかり遅くなってカレンに怒られたうえに飯抜きになった・・・
とか
ある日は
「もっと気配を消せ!魚が逃げるだろうが!魚は気配にとにかく敏感だ!晩飯は自分が取った魚だけだぞ、完全に気配を沈める術を身につけろ。おら、多少寒いからって震えるな。体の端から端まで全て自分の意志で動かせ!
封印されていてもわずかにもれる鬼の気配は殆どの生物にはプレッシャーになる。これを鎮めないとまず魚は穫れんぞ」
(そんな大声出されたら魚逃げるよ・・・カレンさんと喧嘩した直後だからって八つ当たりしなくても)
結局日が暮れても魚がとれずカレンさんにパンだけ貰ったり・・・
またある日は
「今、この世界で一番人口が多く、繁栄している種族は人間である。身体能力は他の亜人全般に劣る我々人間が他の種族に勝るために長い年月をかけて磨きあげられたのが武術と戦術である。人間は力が弱いからこそ、技を磨き、集団戦を磨いた。
戦鬼の戦士は確かに強いが攻撃は直線的で虚実が無く、力任せな面が強い。そのためある程度以上の腕前の戦士なら戦鬼と1対1でも勝機が見いだせるわけだ。
ジャン、お前も戦鬼に生まれた以上、お前の生き肝ねらいの輩が襲ってくる事が必ずある。その時相手が俺以上の相手とも限らん。
また戦闘で興奮すると力の暴走も招きかねん。
だからお前には興奮し力を暴走させる前に冷静に相手を制圧出来るだけの技を身につけてもらう。
というわけでまず手本を見してやるからかかって来い」
そう言って刃引きした長剣を構えるデイリー。僕は同じく刃引きした長剣を構え、全力で突進した。
(日頃の恨み・・・痛いめみせてやる)
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・・
・・・
そこには全身に打ち込まれ痛いめにあった僕の姿があった。
「筋は悪くない。剣筋はすでに真っ直ぐ振れているし、一撃一撃も重い。しかしまだまだ俺には届かないな。
明日からは基礎体力、精神集中の後に少しずつ基本から教える。今日はもう休め」剣を鞘に収めながらデイリーは家の方へ帰って行った。
「力が封印されているとはいえ戦鬼と戦って息ひとつ乱さないなんて・・・デイリーとは一体どれだけ離れているんだろう」
痛む体を何とか起こしながら去っていくデイリーの背中に向けてつぶやいた。
そんな地獄の修行をひたすらこなし、夜はカレンさんに勉強をならいながら月日は流れていった。