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プロローグ

そこはまるで地獄の様だった。前日までの長閑な日常など想像もつかない光景がひろがっている。

燃え盛る炎、崩れ落ちた家屋、所々には無惨な死体が転がっている。


死体には剣や槍、矢が刺さっている物もある。

また死体は身長が2メートルから3メートルはある、異常に体格が大きく、鋭い犬歯が開いた口から見えている、燃えるような赤毛と赤い瞳を見開いている。

死んでいるのは全て戦鬼(オーガ)と呼ばれる亜人であり、ここは争いを嫌う戦鬼たちが住む隠れ里だった。

戦鬼の死体は全て胸が開かれており心臓を取り除かれている。戦鬼は体に鬼の力を宿しており特に心臓と血液には力が宿るため、特殊な興奮剤などの材料として高値で取り引きされるため傭兵団に襲われ里ごと壊滅させられたらしい。



そこに二人の男女が表れた。ひとりは黒髪黒眼の目が覚めるような美人で黒いローブを着ている女性。もう一人は皮の軽鎧を着て深緑の外套を羽織った大柄で精悍な顔つきの茶色い髪の男性で、どちらも険しい顔をしている。


「間に合わなかったの・・・

誰かー!!生きてたら返事をしてー!!」

黒い髪を振り乱しながら女性は村の中を駆け抜けて行く。


すると燃えている家の中から全身を煤で真っ黒にした子供の戦鬼が出て来た。


「タ、タスケテ」


女性が駆け寄るが目の前で子供は倒れてしまった。


「生きてる!でもひどい火傷だ。デイリー、回復薬ありったけちょうだい!!」

「助かりそうか?カレン」

女性が叫ぶとデイリーと呼ばれた男性は駆け寄って行き外套の内側から回復薬がはいった瓶を5本取り出すとカレンと呼ばれた女性に渡した。


「助かるかじゃない、助けるのよ。・・・あぁもう薬が足りない、もうストックは無いの!?」回復薬を火傷にかけながらカレンは叫ぶ。


「渡したぶんで最後だ。魔術で後押し出来ないのか?」


「私は回復魔術は苦手なの!!知ってるでしょ!何か魔術の触媒があれば……そうだ!!デイリーまわりの戦鬼達の死体から血を集めてちょうだい。うまくいけば鬼の力を引き出して回復させられる!!」


「わかった」


「これなら、いける!!」

子供の戦鬼は他の戦鬼の血を飲ませた途端に全身の火傷が治った。


「良かった・・・!!」

気を抜いた途端に今度は全身が一気に赤く染まっていく。


「カレン・・・ヤバくないか?これ」


「暴走する・・・!!ヤバいヤバい、デイリー少しだけ押さえててちょうだい。封印する!!」「わかった。急げよ」

デイリーは腰に下げた長剣を引き抜き正眼に構えながら戦鬼の子供を睨みつける。


「子供とはいえ、暴走戦鬼、手加減したら、こちらが殺られるな」

デイリーが外套を翻しながら切りかかる。それを狂気に染まった戦鬼が直接掴んで止めた。

「くそ、急げカレン、長くはもたんぞ」



デイリーと戦鬼が戦っているのを横目にカレンはローブの懐から黒塗りの腕輪を取り出しながら魔法陣を周辺に描いていく。

「あと少し・・・よし、できた!!デイリー下がって」

デイリーが戦鬼から距離を取った途端に魔法陣が輝き出す。

途端に戦鬼は動きが鈍くなっていく。

「ふ~助かった~」

カレンが大人しくなった戦鬼に近寄り封印の腕輪をはめる、すると戦鬼の子供は肌の色も元に戻り呼吸も落ち着いていき、そのままカレンにもたれかかり眠ってしまった。


「さて、他に生存者がいないか、探してくる。お前はその子を見ていろ」

デイリーは剣を鞘にしまうと里の奥に歩いて行った。


その後ろ姿を見送るとカレンは戦鬼の子供に膝枕をしながら、これからどうするか、考えた。



しばらくして、デイリーが戻ってきた。

「駄目だな、他に生存者はいなかった」


「そう・・・この子一人ぼっちになっちゃったね・・・」

カレンは悲しそうに涙を浮かべながら呟いた。


「この状況で生きているだけで奇跡だ。命あるだけ喜ばないといけない」


「ねぇ、デイリーこの子家で引き取らない?」


「・・・言うと思ったよ、となるとこんな子供をつれて旅は出来ないからな、どこか拠点となる街を探して定住するか」

デイリーは諦めたように呟くと懐から地図を取り出した。


「とりあえず南の自由都市連合フリーダに向かうか・・・あそこなら亜人差別も少ないらしいしな」

そう言いながら子どもを担ぎ上げるとデイリーは歩き始めた。

「あ、待ってよ・・・ありがとね、デイリー・・・ワガママ聞いてもらっちゃって」

カレンは急いで追いつき横にならぶ


「それくらい構わん・・・夫婦だろ。」

デイリーのぶっきらぼうに答えながらカレンに歩幅を合わせて歩くスピードを落とした




あたりはすっかり燃え尽き、灰しか残ってない村の後を子どもを抱えた二人は寄り添いながら去っていった。



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