桜並木
あれからどれ位経ったのだろうか。
初めて出来た彼氏の龍夜が死んだのは・・・・・・・・・・。
偶然乗り合わせたバスがハイジャックにあった。
剣道を習っている彼、体格がいいのはそのせいだろう。
ジャックハンの目に留まり有無を言わさず射殺された。
桜並木を見に行くはずだったのに。
ライトアップされてて綺麗だろうね見たいな話をしていた。
今でも覚えている。
あれから1年、気の強い私は一度も泣いていない。
この事実を知っているのは親友の亜鶴だけだった。
「ねえ、桃崎さん、夏輝さん」
振り返った少女は俗に言う美少女で今も前も彼氏がいないのが不思議なくらいだ。
「ねえ、彼氏ほしくない?合コンするんだけど・・・・・。」
そう言っている隣りクラスの友達の言葉を亜鶴がさえぎった。
「私が行く!」
突如、亜鶴が言い出したのにはワケがある。
「うん、亜鶴行ったげて、私、興味ないから」
離れていく夏輝を見送ってから亜鶴は口を開いた。
「1年前から人が変わったの、あのバスジャック事件から・・・・・・。」
「あのバスジャック?」
「あそこに彼氏が乗ってたの。」
「えっ。」
「だから、あんまりね。」
そんなふうに気を使ってもらってるなんて夏輝は知らない
「何で断ったのかな?」
帰り際に思ったこと。
ベットの上で布団に包まりながら思い返し呟いてみた。
「教えてやろうか?」
突然、布団の向こう側から聞こえた懐かしい声。
----龍夜ーーーー
思い切り布団をめくり起き上がると
何かに勢いよくぶつかった。
額を痛そうに抑えながらニヤッと笑いながら
「ただいまぁ~」
と言った龍夜を思いっきり枕でどついた。
-----実物ーーーーーー
「痛いなぁ。なに? 久々にあったのに絶句? 普通ココでハグじゃない?」
ふざけて笑う龍夜を目の前に何も声が出ない。
「なんで葬式で泣かなかったの?」
不意に聞かれ
「見てた・・・の?」
としか返せなかった。
「うん、だから今日はナツキを泣かせに来た。12時までに泣かせて見せるよ。」
その言葉に夏輝は食って掛かった。
「何?どぉ言うこと?12時って何!?」
「それまでしか許可が下りなかったの!」
口調は強いが顔は微笑んでいる。
「どうよ、新しい彼氏できた?」
「ばか、作ってないわよ、知ってるくせに」
とか何とかでドンドン時間が経ってゆく。
時間気にしつつ久しい彼とのお話を楽しんでいた夏樹だったが3度目に時計を見た瞬間言った。
「もう時間無いよ。泣かせてくれるんでしょ。」
龍夜が恥ずかしそうに息を吸い込み一気に言った言葉に涙が止まらない。
罪悪感が体を駆け巡った。
あの時、私も乗っていたのに殺されたのは龍夜だけ。
本当は泣きたくなくなかった、泣くと言うことは龍夜がこの世にいないコトを認めること。
でも、勝手に流れてゆく涙を止めることが出来ない。
泣いていた時間は瞬く間に過ぎてゆく。
「もう行くよ。」
そう言いながら消えてゆく龍夜をただ見つめることしか出来ない。
最後の最後に龍夜が完全に消える瞬間
「もう泣くなよ」
と言った言葉にまた泣いた。
泣かないと決めていた私を泣かせたあの言葉
桜並木一緒に見れなくてごめんな。夏樹がしわしわの婆ちゃんになったらまた会えるよ。
その日まで待ってるから、俺をしばらく忘れて彼氏作れよ・・・・・・・。
思い出してまた泣いてしまう私・・・・・・・。
朝まで涙が止まらなかった。
fin