少女、狙われる 終
おそくなってすいません。更に短いという。
おちつくまで、更新はがんばって週一できるようやってみます。
バン、パキィン、ガシャン
シオンを抱きしめ、飛んできた弾を転がって避ければ、後ろでなにかが割れる音がした。
(ああもう。どれも高価なのに!)
(そんなこと言ってる場合じゃないよ)
替わって、という言葉に頷いて、身を任せる。いつもより乱暴に意識が沈み、バシャンと水を跳ねたような気がした。
即座にαが身を起こし、シオンを抱え上げる。
「レティ、大丈夫だよね」
「はい。これくらい、当たっても問題ありません」
弾を腕で払い落としたレティは、口と同じように余裕そうだ。
「じゃあ、ぼくは出勤するから、よろしくね」
唖然として動けないシオンを、素早くレティに押し付けると、すぐそばの窓を突き破って外にでた。
ガシャン!
ガラスの割れる酷い音。
(いたっ)
別になんともなかったが、反射的に口が動いてしまった。
ドドドドド
外に出たのが知れたのか、銃撃が激しくなり、庭を荒らす。跳ね返った土がスカートを汚した。
「まったく……」
軽く避けながら、αが舌打ちをする。わたしも共感して、心の中で舌を打った。スカート汚しやがって。しかし、若干αな声色が低く感じられるのは気のせいか。
(α、怒ってる?)
恐る恐る聞いてみれば、αは足を止め、わたしの顔で、いつになく凶悪に笑った。
「ものすごーく、ね!」
一斉に飛んできた弾を、さっきレティがしていたように振り払う。ただし、弾は弾かれるだけでなく、来た方向へそのまま帰いく。
(やば、完全にαキレてるし)
なにが彼の逆鱗に触れたのかわからない。弾が帰っていった方から、叫び声やらなんやらが聞こえてくるが、αは興味なさ気に、声に出してわたしに語りかける。
「まったく身の程知らずだよね、キルシア」
(そ、そーですね)
正直、αがキレるのは久しぶりだ。昔のことはあんまり覚えていないけれど、このままではよくないのはわかりきっている。せめて何に怒ってるかわかれば。 まあ、相手も人に銃口向けたんだし、何されても文句言えないか。
(何匹か逃げた。追うよ)
わたしの返事を待たずに走り出す。 今のわたしの身体じゃ、そんな無茶は出来ないのが救いだね。
ーー今、の?
はて、一瞬違和感がしたけど。考える間もなく、αは屋敷の敷地から飛び出した。木ばかりの辺境の地だが、今回ばかりはまわりに被害が及ばなくてよかったか。
(もっと人通りが多ければ、狙われることもなかったな)
(ごもっともで)
逃げたやつも見つからないし、やっぱり不便なのは変わらないようだ。
しかし、やっぱりαはピリピリしている。いいかげん冷静になれよ、と言いかけたそのとき、ポケットが震えた。
「はい、キルシアです」 ぱっと引き抜いた連絡機器に向かって、αが言った。
『襲撃があったと聞いた。無事か?』
「無事よ。今取り逃がしたのを追ってるわ」
こんなときになんだが、αの言葉遣いに鳥肌が。αのことは隠しておくべきなのだけど。
『……ならよかった。そいつらはこの前の銃所持者とつながっている可能性がある。こっちからもなんらかの手助けをするから、追跡を続けてくれ』
妙な間があったものの、それだけ伝えると、一方的に通話が切られた。
(彼もいいかげんだよね。そんなにあの子のことを信頼してるのか)
αの思念が、ふいにわたしに入ってくる。
(それとも、他力本願ってやつか……)
(α、独り言漏れてるよ)
親切なわたしが教えてあげると、あからさまに動揺した。
(えっウソ、ごめん、気にしないで)
それからはプッツリと流れは止まり、αはたんたんとターゲットを追いつづける。
αが考えを垂れ流すなんて珍しい。わたしの考えは読まれても、こちらに流れてくることなんてなかったのに。
どれだけ頭に血が上っているのだろう。飽きれてため息をついてみる。
ハァ。いつもならツッコミが入るところが、シンとしている。ただ、木々がものすごいスピードで過ぎ去っていくだけだ。
(α)
ただ、胸騒ぎを感じて、彼の名を呟いた。




