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英雄殺しの勇者  作者: 紀春


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VS大盾のライズ

アスラはライズに促され冒険者ギルドに入る。中には冒険者が数人いたが、その全てから注目が集まっている。


当然だなとアスラは思う。この白銀の騎士である私がこの場にいることに驚いているのだろうと。

そんなアスラを見てライズとニコがなんとも言えない表情をしているが、彼らはこの驚くべき状況が理解できていないらしい。


ニコがテキパキと訓練場を借りに行き。


「はい。アスラさん。借りられましたよ」


と言ってくる。

目を瞑り腕を組んで集中していたアスラはその声に目を開けうむと頷く。


一方のライズは周りの冒険者に

「あの騎士は何者だ?」やら「決闘か?」などいろいろ聞かれていたが

「なんかめんどくせー奴に捕まった」とだけ答えていた。


訓練場に入り、アスラは周囲を見渡す。地面の硬さや奥までの距離。そういった事を確認しながら思う。

騎士団が使うようなものに比べれば小さいが必要十分という感じだ。ニコのおかげか訓練場には誰もいなかった。


「おい、さっさとやろうぜ騎士様?」


いつの間にか気合十分な様子でライズが盾を構えている。先ほどまでのライズとはまるで別人だった。

長い髪を後ろに結び、よく見えるようになった顔は思ったよりも若く、これが噂の大盾のライズかと感じた。


その圧倒的な強者感にアスラは思わず笑みを浮かべる。だが彼の雰囲気に若干の違和感を覚えた。

大盾を使う割に守りではなく攻めの感覚があった。


「我が名は白銀のアスラ!大盾のライズよ今日こそ決着をつけるぞ!いざ参る!」


そう言って大地を蹴った。アスラの身体は瞬く間にライズの元へ接近する。


「兄貴たち初対面のはずじゃなかったっけ?」


と言うニコのツッコミを置き去りにして。


アスラの剣がライズに届く刹那。彼は大盾の角度を少しだけ変化し剣速を受け流した。

彼がそのまま大盾を流れのままに回転させるのを見てアスラは速度を緩めず彼の背後を取る。ガラ空きの背中を差し貫く剣を今度は正面からライズに止められ、歯噛みする。


大抵の相手はこの間に斬る事ができるはずが、全く届かない。


「さすがは大盾のライズ。面白い。ならこれならどうだ!」


そう言うやいなや彼女の身体は訓練場の中を縦横無尽にまさに飛んでいた。いつ地面についているのかわからないほどの速さでライズ相手にさまざまな角度から剣筋を入れる。

大盾を使うライズはやはり速度がない。致命傷は防ぐもののライズの身体には目に見えて傷が増えていった。

 

それでも決定打にはかける。そう判断したアスラは一度距離を取りライズを見つめる。

傷だらけになりながら大盾を持つ彼の表情は笑っていた。

さすがは武人。彼もこの勝負を楽しんでいるのだろう。そうアスラは思った。


あたりには噂を聞きつけたのかギャラリーが増えている。そんな彼らに宣言するかのように

彼女は自らの剣を掲げると魔力をまとう刀身が白銀に染まっていく。


「これぞ我が奥義、大盾のライズ。防げるものなら防いでみよ!」


そう言って彼女は飛び出す。最高速度に達しようかと言ったところで突然ライズは己の盾を放り投げた。


え……?なんで??死ぬ気???


アスラは全速力でライズに向かう刹那そう思う。

アスラも騎士だ。人を斬った経験はある。だがライズは彼らとは違う。何の罪もない。


やめろ…

やめてくれ…

もうこれ以上は…


アスラの剣先がライズへと吸い込まれていく。

その距離あと僅か。色を失った世界でアスラは思う。

 

止まってくれ!!

 

自身のスピードに何とか抗いながら前を向く。

その眼前には安らかに笑うライズの顔が見えた。


アスラの手に肉を断つ感触がする。


(ああ、神様ごめんなさい。私は何の罪もない人間を殺してしまいました)


確かにアスラも興がのり、つい大技を放ってしまった。それが悪いのはわかっていた。

でもあれはライズを信用してだった。それなのに盾を捨てるなんて、彼は自ら刃を迎え入れに来てしまった。


彼の最後の笑顔が離れない。


アスラは止まっている己の剣を引き抜こうとした。

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