ニコの演舞と一筋の光
宝剣を手にしたニコは当に戦場を駆ける風だった。
魔力を今は使えないセレナにとって、彼の速度は目で追えない。
突然現れ、敵を一太刀入れればまた消える。
まるで一つの演舞を見ているようにセレナは感じていた。
「凄い……!」
ここが戦場であることも忘れ、セレナはその舞に酔いしれていた。
彼女も本来闘う者である。だからこそ本当は彼の隣に、隣でなくとも彼の力になりたかった。
ニコが剣を持つまではその歯痒さに悩まされていたが、今はそんな思いも全て、彼の流れるような動きが洗い流してしまった。
セレナは今その演武をただ酔いしれる少女のように夢中になっていった。
隣で彼女の父が感嘆の声を上げているが、そんな雑音など耳に入らない。
当に彼女は今その全身でニコの圧倒的な武勇に勇気づけられる。
ふと彼女自身に意識を向けると、先ほどまであったひどい頭痛や、目眩がなくなっていることに気づく。
さらにこの場所にはあの絡みつくような魔素を感じない。
既に敵はもう数体を残すのみとなっていたが、それでも彼だけに負担をさせるわけには行かなかった。
ゆっくりと少し前に出ると、彼女の愛用の杖を優しく触るように撫でてから構える。
この状況で撃ったら彼を巻き込んでしまうかもしれない。
普通ならそう考えるがセレナは違った。
(ニコ様なら私の意図に気づかないはずがありません。私の魔力を気づいてくださいますよね。)
セレナは魔力を紡ぐとなんの躊躇いもなく戦場へと杖を向ける。ニコへの無条件の信頼がその杖の向く先をを迷わせない。
「爆ぜなさい!」
今日何度目かわからぬ爆裂魔法は、彼女の調子が戻った事を表すかのように四人で戦っていた時よりも大きく、そして激しかった。
やがて爆発が収まると辺りに魔物の姿はいなくなっていた。
もちろんニコはしっかりと彼女の意思を汲んでいたのかしっかりと立っている。
ところどころ服が焦げているように見えるが、セレナはそんな些細なことに気を留めなかった。
「ニコ様!かっこよかったです。本当に物語の英雄のようでしたわ!」
彼女はそんなニコの元へ駆け寄ると体当たりをするように彼へとその身を投げた。
ニコは何かを察したように表情を緩めると満面の笑みで向かってくるセレナを抱きとめる。
「いや……最後の魔法は凄かったね。僕なんてまだまだだよ」
そんな謙遜をするニコがセレナにはとても愛しく思った。そんな彼の匂いを嗅ぐように顔を彼の胸に寄せる。そんなセレナをニコはゆっくりと離すと心配そうな顔でこちらを見てくる。
「セレナ。本当に大丈夫なの?あれだけ苦しそうだったのに」
ニコは彼女の身体を心配そうに見回しながらところどころ確認するように優しく触れてくる。
そんなニコの身体が若干焦げていることに今更ながらにセレナは気づき、またやってしまったと少し反省する。
そんな空気をロナルドがわざとらしく咳払いをしながら騎士を連れ、ゆっくりとやってくる。
ニコの圧倒的な武勇を目の当たりにした騎士たちも彼に尊敬の眼差しを向けている。
そんな彼らの眼差しがセレナは自分のことのように誇らしくなった。
ニコはそんなロナルドに対し、辺境伯に対してお願いをする
「辺境伯様。我々をお救いください。森の奥で恐らく悪魔と思われるものが」
「悪魔だと……?」
「とにかく時間がないかもしれません」
「わかった。話は向かいながら聞こう」
ニコが放った悪魔という単語はこの場の空気を一瞬で変えた。セレナも、かつての英雄を悪魔が殺したという事を知っていた。
あの絡みつくような魔力。
それこそが悪魔の本質なのだとセレナは理解した。
あの奇妙な魔物たち。その本質もあの魔力のせいなのだと。
(もし私があのまま、あの戦場にいたら。
あの頭痛を無視し続けていたら、もしかしたら。
あの魔物たちのように……)
セレナはそんな思いから戦場へと戻る足が竦む。
彼女が集団から少し遅れるようになった時、まだ少し距離のある戦場から一筋の光が上がった。
「あれは!?」
誰かの声で顔を上げると、前方に一筋の光がアスラの目にも見える。
それは悪魔などではなく、もっと神聖な魔力。そして少し馴染みのある感覚を覚える。
「アスラ……?」
口に出してからようやく。その魔力がアスラのものに似ていると気づく。しかし、何故アスラが聖魔法などというものを使えるのか。
魔法の才に溢れるセレナだって聖魔法は使えない。
わからない。けれどあの魔力がそこにある。ならば彼女は少なくともまだ生きている。
「聖魔法です!あれならば悪魔にも対抗できます!急ぎましょう」
いつの間にか竦んでいた彼女の足はこの集団の先頭に立っていた。
休日に
昼寝をかまし
夜七時
晩飯を作る
時間しかなく
特に告知はしていませんが、
八時に上げられなかった。作者の心の短歌です。
存分に殴ってください。




