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英雄殺しの勇者  作者: 紀春


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作戦前夜

半月(ハーフムーン )の四人が本陣へと戻ると、朝とは様子が違っていた。

まず山の方へと調査に出ていた冒険者が戻ってきているので冒険者の数は昨日のほぼ倍にまで膨れ上がっている。

ただそれだけではなく辺境伯が呼んだであろう彼の騎士と思わしき統一された装備をまとった一団が規則正しく並んでいた。


「なんか物々しい雰囲気になってきたな」

「ああ。それだけロナルド様も本気ということだろう」

「まってお義……辺境伯様が出てくるよ」

「お父さま!」


そんな騎士たちの中心からロナルドが現れる。


「皆のもの!二日間の調査。ご苦労だった。貴殿らの働きによっておそらくこの地の原因はこの森の奥地にありそうだということが見えてきた。

最終競技に入りたい。パーティリーダーは大変申し訳ないが一時間後に我がテントへ集まってほしい」


そう言葉を残し彼と彼の騎士たちはテントへと戻っていった。周囲の冒険者たちもそれに倣うように動き出し、半月(ハーフムーン)の四人も一度彼らのテントへと戻ることにした。


テントに入るとニコが昨日テントを出てから様相が随分と変わっていた。綺麗に並べていた数々の調理器具や道具類などがボコボコに凹んでいたりところどころ欠けたりしている。

  

「ホントのとこ何があったのこれ?狼がどうこうって」

「そうなんだニコ!聞いてくれ。実はライズが狼になっちゃったんだ!」


ニコとセレナはアスラの発言を聞いて顔を見合わせる。四つのジト目がライズへと突き刺さる。


「いや、待て待て。違うぞ?そんな目で見るなよ。ただこいつに自覚を持てって言ってただけだ」

「ふーん。それで私をあんな目に合わせたのか」

「お前言い方が、いや俺も悪かったけどよ……」


結局ライズは事の次第をニコとセレナに洗いざらい話すことにした。その結果は


「兄貴が悪い」「アスラが可哀想です」


ライズは有罪判決を仲間から言い渡されることになった。


「いや、でもよ。それならお前ら二人だってえらく距離が近くねーか?」

「私とニコ様は将来を誓い合いましたから」

「ちょっとセレナ!?」

「違いますの?あんなに強く抱き合ったというのに……」

「それは!でもいもここで言わなくても!」


セレナの食い気味のペースにニコが圧倒されていると、不意にニコの肩に片手が置かれる。ニコがそちらを見るとニヤリとした顔でアスラがこちらを見ていた。


「抱き合うくらいなら私も昨日ライズとしたぞ?」

「はあ?お前今それは違うだろ!」


今度はライズがアスラに圧倒される。このパーテイにおいて男性陣は女性陣に圧倒されるものという役回りが決まっているかのように、この後も昨日の出来事を共有しながらその関係を認識していくのだった。 

結局のところ半月(ハーフムーン)のテントは夜でなくとも終始賑やかであり、周囲の冒険者から生暖かい目で見られていたのだった。


しばらくしてニコとセレナが連れ立って辺境伯のテントへ向かうと、すでに何人かの冒険者たちが集まってていた。


「これだけの方がお父様を慕ってくださっているのですね」

「そうだね。やっぱり本人が直接出陣しているのが大きいんじゃない?冒険者はそういう人が好きだからさ」

「それは今度お父様に言ってあげてくださいね。きっと喜ばれますわ」


集合時刻が近くなり全てのリーダーが集まり終わると、それを待っていたかのように辺境伯ことロナルドが一人の騎士を引き連れ顔を現した。


「皆のもの。よくぞ集まってくれた。まずは今日の調査報告からしてもらおう」


本日の調査報告から行われた。

あらかじめ大まかな報告はロナルドに入っているらしく、すべての冒険者から聞くというよりは何組かのパーテイに絞って話を聞いて回る。

まずは山を調査していたところからの報告を聞いている。

 

やはり街道に近い場所には強めの魔物が出現することはあるものの、山の奥隣街の近くまで行くと平時と変わらないとのことのようだ。


一方森の中では昨日同様に比較的強い魔物が多く出現したようで、途中ニコも発現したが飛竜のようになんでこんな場所に。というような魔物の報告が相次いでいた。


「皆のもの。ご苦労だった。貴殿らの働きにより、私の懸念はおそらく正しいことが証明された。

原因はこの森だ!明日は全軍を持って森を虱潰しに回っていく。無論私も出る。原因が究明され、この問題に終止符を打とうではないか!」

「「「おー!」」」


流石の辺境伯といった様相で冒険者たちの士気も上がる。その後辺境伯によって冒険者たちの配置場所が組まれ、当然ながら半月(ハーフムーン)は辺境伯の直ぐ側に配属されることになった。


「いよいよ明日が決戦ですね!腕がなります」

「うん。だからね。ちゃんと守るから僕の後ろにいてね。前に出ちゃだめだよ?」

「はい。ニコ様」


彼女は辺境伯の本隊に入らないのかと聞くのは野暮だろう。ニコはそう思いながらも彼女へしっかりと釘を差しておくのだった。

      

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