対照的な二人組
辺境伯率いる冒険者たちが目撃情報の多い街道あたりに陣を敷いていく。この付近までは比較的見晴らしがよく、ここを拠点に数日間の調査をしようという事になった。
街道はこの先で大きな森が現れ、やがてその地が傾き山になる。
街は西側にあるため、西側を背に森にはいる手前で本陣を敷いた。
冒険者パーティーは森を調査するグループ。その先の山の方まで足を伸ばすグループ。またこの本陣付近を調査するものなど複数のグループで行うことになった。
その中で半月一行は森の調査のグループそれも比較的奥地側に回された。この場には他に4組ほど冒険者パーティがいるのだが、やはりと言うべきか何故かあのじゃじゃ馬姫ことセレナもいた。
「ニコ殿についていくなら構わない。とお父様に言われましたので、よろしくお願いいたしますわ」
優雅にカーテンシーを行う姿はさすがのご令嬢といったところだが、その格好は黒を基調とした魔術師の装いで、黒に彼女の鮮やかな金髪がよく映えている。
「良かったなニコ。お前の姫様が一緒だな。上手くやれよ」
ライズのニヤついたその問いに沈黙の腹パンを返す。ニコの本気はさすがのライズも避けきれない。
「っ!」
声にならない声を上げるライズを無視し、ニコはセレナに向き直る。
「セレナ様。あの時は貴女の瞳に戦士の志を見ました。それを僕は信じます。だから…」
ニコの決意表明のような宣言をセレナはニコの顔を覗き込むようにすると
「ニコ様?私を守ってくださるんでしょ?私あの時とても……とても」
そう言いながらニコの手を取る。そして彼女は少し顔を赤らめながら
「心強く思いました。ニコ様がお父様に。その立ち向かってくださって。とてもかっこよく思いました」
セレナは恥ずかしそうに微笑んだ。それはじゃじゃ馬姫と言われるとは到底思えない。年相応の少女の顔だった。
そんな二人を遠巻きに見ていた残りの二人組は
「セレナ様とニコって案外いい組み合わせなんだろうか?」
というアスラの言葉にライズは首を縦に振る。
「まあ。あのお嬢様のことはニコに任せとけばうまくやるだろ」
ニコが守ると言った。彼は責任感がつよい。きっとどんな事があってもセレナはを守るだろう。そうライズが思っていると
「そうだな。我々が口を出すのも野暮というものか」
という返答が返ってくる。
「……え?そっちかよ。戦闘の話のつもりだったんだが」
「あ、ああ。そうだな。それもそうだな……」
そう言ってアスラは少し恥ずかしそうにうつむいた。
「私も一応。女だからな。そういう感じのやつは少しな」
そう言っていつもより女性を意識させる目でこちらを見上げてくる彼女を、ライズはまともに見ることはできなかった。
「まあ。わかるけどよ」
ライズは前方二人のやり取りを目線の先に無理やり変えるのだった。
しばらくして半月はセレナを加えた四人で行動を始めた。最も四人組というよりはライズとアスラ、ニコとセレナの二人組が二つという様相だった。
「敵がいますわー!」
そう言って後衛にも関わらず走り出してしまうセレナをニコが慌てて追いかけ、敵との間に割って入る。
大きな熊のような魔物がセレナに襲いかかろうとするのをニコは大熊のアキレス腱を切って阻害する。
バランスが崩れた大熊にセレナの炎の魔法が降り注ぐ。一瞬で炎上した敵を背に
「セレナ様。敵に向かっていかないでください!」
「逃がしたらまた別の方に被害が、それにニコ様も私の魔法に当たりますわよ!」
「だから僕がいますから!飛び出さないで!隙はつくるから!」
熊の魔物の死骸にもはや彼らの興味はなく、連携とは言えない連携を重ねて魔物を屠っていく。
一方ライズとアスラは
大きめな蜘蛛型の魔物を二人で相手取っていた。
ライズが前に入る際アスラが忠告する
「奴は毒持ちだ!当たるなよ」
「誰に物を言ってる」
と大盾を巧みに扱い、足を使った切り払いや大きな顎を使った噛みつきを防いでいく。
粘着性の糸を使った攻撃のみ避けていくと、デススパイダーの方がしびれを切らし、巨体を生かして押しつぶしにくる。
ライズは押しつぶすために巨体が上がったその瞬間を狙い、逆に自らがその下に入る。そのまま巨体を大盾を使って突き上げた。
押しつぶすために上がった巨体を下からの突き上げにデススパイダーもたまらず背中を地面へと向けひっくり返った。
その大きな隙をアスラが見逃すはずがなかった。
ライズが攻撃を耐えている間に、魔力を剣に溜めていた渾身の一撃。
デススパイダーはそれを死をもって受け入れるしかなかった。
「流石だなアスラ。一撃とは。お前がいると負ける気がしねーな」
「ライズの盾あってこそだ。さすがに溜めなしで一撃は無理だからな」
そう言って二人は拳をぶつける。
若い二人とは違いこちらはしっかりとした連携で魔物を屠っていった。
しばらくして落ち着いてくると、ようやく暴走が収まったセレナを連れ、ライズたちの方へ戻る。
「だから心臓に悪いですよセレナ様!何かあったらどうするんですか!こんなに遠くまで来て」
そう言って珍しくボロボロになりながら彼女を咎めるニコに
「でもニコ様が私を守っとくださいますでしょ?」
とこちらを見上げくるセレナに大して顔を赤らめて彼女から目線を外すしかないニコだった。




