表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/100

第4話 グレゴリー様、まさかの進化!?先生って職人なんですか!!

歩きながら、小さく息を吐いて、

あたしはあらためて辺りを見渡した。


これまでだって、あたしは一人で

いろんな遺跡や封鎖区画を踏破してきた。


魔術遺物や古代道具を探して――。


でも、ここは桁違いだ。


本能が、「踏み込むな」と叫んでいる。


なのに、あたしは……

迷子になっていた。


右手に持った《ランタン》。


—―正式には、≪理想収斂(りそうしゅうれん)(ともしび)


普段なら、進むべき道を

優しく照らしてくれるはずだった。


でも、いまはもう反応しない。


あたしの力じゃ、

もう起動できない。


道を示す光が消えたら……

どこへ向かえばいいのかすら、

わからない。


あたし、このまま無事に帰れるの……?


怖い。


怖すぎて、足がすくみそうになる。


――だめだ。


帰り道なんて考えたら、

もう歩けなくなる。


……気をそらそう。

何か他のことを考えなきゃ。


でも、考えたのは――

帰りたい場所のことだった。


……いや、“帰りたい”なんて思ってない。


あの夜を思い出すたび、

胸の奥が焼けるみたいに痛むのに。


ふと、さっきのことが頭をよぎる。


先生の魔術具の起動速度。


……異常だった。


速さも威力も、

まるで神話の中の話みたいで。


(ああ、あたしの《紅蓮の牙》じゃ

 間に合わなかったかも……)


あたしは小さくため息をつきながら、

大切な腕輪型魔術具に

いつもの呼びかけを心の中でつぶやいた。


(紅蓮の牙。愛称、グレゴリー様。

 お願い、あたしを守って!)


呼びかけると、右手首に巻いた腕輪型魔術具

《紅蓮の牙》の紅玉が、かすかに明滅する。


少し魔力効率は悪いけれど、

護身用に炎をまとった長槍を召喚できる。


あたしにとって、

命を預けられる唯一の盾。


「炎の奔流、起動!」


ヴゥン……。


(……ちょっと遅い……?

 いや、やっぱり私の反応が鈍いだけか?)


「炎槍!!」


ヴゥン……。


(……だめっ!

なんで全然刺さらないの!?)


「貫け!

 火矢っ!!!」


ヴン……。


(もっと……早く……

 いや、やっぱりアタシの腕が悪……)


ぶつぶつ呟きながら、

紅い魔術陣を繰り返し描く。


炎槍を召喚しても、

うまく決まらない。


……これじゃあ、

次も間に合わない――!


そのとき。


前を歩く先生が、

ぴたりと足を止め、振り返った。


「……起動が遅いな。

 貸してみろ、調整してやる」


「へ?」


何言ってるの、この人……。


先生はあたしの右腕を掴むと、

そのまま地面に座り込む。


「先生!?」


「ちょっ……、ダメダメダメ!

《紅蓮の牙》様にさわらないでっ!!」


「やめてぇぇぇぇっ!!!」


叫んでる間に、

あたしの大切な腕輪型魔術具《紅蓮の牙》様は、


テキパキと分解され、清掃され、

部品を二つ、三つ取り替えられる。


その手際の良さに、思わず舌打ち。


「アタシの気持ち置いてかないでっ!

 配慮っ!!」


そしてまた何事もなかったかのように、

組み直されていった。


この人、どんなにあたしが引っぱっても、

微動だにしない。


なんで―――――っっ!!!


「起動してみろ」


作業を終え、

先生は腕を開放してくれた。


右腕には、見た目は変わらない

《紅蓮の牙》様が鈍く輝く。


……いや、

ちょっとだけ紅玉が黒っぽくなってる……?


「……炎槍、起動」


しぶしぶ唱えると――


ヴォン!


……は?


召喚された紅蓮の炎槍が、

一瞬で風を切って顕現する。


しかも、前より太く、

炎の色も深く燃えている。


「貫け、炎槍っ!」


ヴォン!!


ヴォォン!!


ヴォォォン!!


威力も跳ね上がり、

轟く低音が身体に響く。


「燃えろ、

《紅蓮の牙》様っっ!!!」


グォォォォォォン!!!


三発目。


明らかに火力が跳ね上がってる。


これは……これは――!


「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」


思わず叫んだ。


目が勝手に、

きらっきらに輝いていくのが

自分でも分かる。


「すっごいすっごいすっごい!!!


なにこれ、すっごい!!!」


跳ねる。


回る。


右手突き上げて、

あたし、爆発寸前の喜び!


炎槍の輝きが、

いつもよりまぶしく見えた。


《紅蓮の牙》様。


あなた、本当に覚醒したのね……!


そしてその横で、

何事もなかったかのように立っている先生を見て、

あたしは思った。


たぶん、神話級の魔術具を使う先生は、

超凄腕の魔術具クリエイター……。


目の前で繰り出された技術を思い返して、

ぞくぞくした。


胸まで熱が駆け上がるような感覚。


しばらく、その余韻から抜け出せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ