【後編】神さま、「怪談」になる
更新で~す
長らくお待たせしました m(_ _)m
◇
音を立てぬよう気をつけながら、“保健室”の扉をすり抜ける。
出た先にも、白い壁と天井は続いていた。
廊下が長い。子供が増えたんだなぁ……
人の気配はない。
よし、じゃあ地図を……
◇
廊下を歩き、階段を上って、“図書室”という部屋に来た。
途中、廊下の窓から外が見えた。100年前基準だと、「変わり果てた景色」だった。
人間、山切り開きすぎ…………
……と、いうわけで。
まずここで探すのは、“2万分の1地形図”という地図だ。
地形すら変わっているなら、半端な縮尺ではダメだ。大きな地図で比べる必要がある。
淀川とか生駒山とか、人の手では変えにくい地形を基準にしながら。
そこで使えるのが、2万分の1地形図。
私でも見たことがあるくらい、数多く刷られた地図だ。しかも国が作っているから、精度も高い。
これだ。これの最新版と100年前のを比べればいい……!
えぇと、地図の棚はこれか。じゃあ2万分の1……
2万分の1……
◇
あれ? ない……。
代わりに出てきたのは“2万5千分の1地形図”だ。
中途半端だなぁ。比べるのが面倒じゃないか……。
と思ったら、100年前のも今のもあった。めちゃくちゃ充実した品揃えだ。
というか国、いつの間に方針変えたの? 2万分の1で揃えるんじゃなかったの…… ??
さておき、100年前と今を比べると。
この小学校、どうもあのお屋敷の跡地に建っているらしい。
……うん。××さん家の前の坂がここで、川の合流点がそこだから……間違いない。
あと、地名もがらりと変わっている。
この辺りは「○○村」で、お隣が「□□町」だったはず。なのに両方、「□□市」になっている。
100年の間に変わり過ぎだ。一体、何があったんだ……
まぁいいか、次はどうしよう? ……などと考えていたところで。
廊下から、よく通る靴の音が聞こえてきた。
誰か来る。宿直というやつだろうか?
……などと言っている場合じゃない!
マズい、見つかったら面倒だ。でももう片付けても間に合わない、音でバレる。
仕方ない、隠れてやり過ごそう。せめて霊感のない人でありますように……
「図書準備室、ヨシ!」
靴音が途切れた……と思ったら、はきはきした男の声がする。
指差喚呼か。やはり宿直のようだ。
そして靴音が大きくなり、ついに扉の前で止まる。
「図書室、ヨシ!」
音が離れていく。良かった……
「ん? 今光った……!」
し ま っ た !
靴音が戻ってくる。どうやら油断して、後光を漏らしてしまったようだ。
というか、力の戻りが早い。もう後光が出せるのか、私は……
◆
そういえば、昔誰かに聞いたっけ。
「土地神の実力は、その地に出入りする人数で決まる。信者の数ではない」
誰とは言わぬ、“関東の大酋長さま”の例が、分かりやすいだろう。
彼の地は今や、帝都東京の都心。日々、何十万もの人々が出入りする土地柄だ。
彼の首塚に手を出せば祟りが……というのも納得できる。
◇
だとしたらここ、何人出入りしているんだ?
……そんな疑問は一瞬で吹っ飛んだ。
カギが外れ、扉が開く音がする。
あと、こちらへ駆け寄ってくる足音も。
「何だこれは……なぜ地図が?」
電灯と思しき、しかし強い光が、辺りを舐め回す。
「誰もいないよな。しまい忘れか? ……戻しておくか」
とりあえず、見つからずに済んだようだ。
だが地図は没収されてしまったし、しばらく動けなくなった。
「施錠ヨシ!」
男が部屋を出て、カギを閉めた後。歩いていく音が聞こえなくなって、ようやく私は一息ついた。
◇
翌朝。私は校舎の屋上にいた。
誰も来ないから……と寛いでいたら、下から大きな声が聞こえてきた。
「わたし見たもん! 車から、図書室光ったの !! 」
「「嘘だぁ~」」
「本当だもん!」
………
……
…
あちゃー、見られてたか…………
後日、この小学校の「七不思議」の最後に、私の後光が仲間入りしたと聞いた。
どうも皆さん、神です。
――――いや大丈夫、怖くないよ!
以上で〆となります。
お読みいただき、ありがとうございました~ m(_ _)m