第9話:「対抗戦 Ⅲ」
〜前回のあらすじ〜
各自『技』を覚えたので"試験"に向けての"実践"
対抗戦を行う事となった。
1度目は、完全敗北を喫する…
今回は2度目…絶対に負けたくない!
気合いを入れて、迎え撃つ相手は
数個の新技を持ったイチと、本調子のサンだった。
対して主人公は…容量の悪いニが相方…
いけるのか?…いや、やるしかない!
開始の合図により、サンが主人公に襲い掛かる。
辛うじて逃げ回るが
相方のニが、絶対絶命の大ピンチ!
本調子のサンを前にして救助に行く主人公…!
この状況…打開策はあるのだろうか…?
ニが危ない…!
頼む、間に合ってくれ!!
サン
「逃がさないよ!ヨンくん!」
くそっ!サンの攻撃が鋭い!
躱すので手一杯だ…!
助けにいくなんて…いや、無理じゃない!
大丈夫だ…落ち着け!
こんな時こそ、冷静に…思い出せ!
何か、現状を変えれる『技』は!?
イチの『風』は!?
ニの『鋼』は!?
サンの『武』は!?
ユウカの『癒』は!?
ギガの…ビリーの…
そうだっ!ビリーの《ボルトショック》!
初見だと絶対に読まれない!
触れるだけで相手を気絶させれる…!
この速度のまま、イチに近付いて攻撃するか?
いや、サンの方が少し速い。
恐らく横からやられる…
だったらサンを……いや、ダメだ。
もし失敗したら、こっちが確実にやられる。
こっちも1回も練習した事ないし…イメージなんて…
ニ
「ひっ…!た、助けて…!!」
…なんで弱気になってんだよ、俺。
しっかりやらねぇと…!
護るって決めたんだろ!!
1回きりのチャンス?上等だ。
成功か…失敗か…50%もあれば…!
サン
「《飛脚》」
急にサンが天高く飛び上がった。
恐らくこのままだと
俺を捉えられないと思ったのだろう。
着地点が分からない…
ゆっくりしている時間は無さそうだ。
とりあえず、ニに被弾しないように
離れた場所で足を止めた。
ビリーを真似て、構えをとった。
…チャンスは1度だけ。
サンの空からの攻撃を躱して反撃。
…最悪相打ちになっても構わない。
早々に決着しないと、こっちが負ける。
サン
「《落蹴》」
物凄い勢いで落ちてきながらの かかと落としだ。
怯むな!やるしかない…!
「やってやる!「雷」《ボルトショック》」
完璧なタイミングだ。当たる!
…と思ったのも束の間。
サンは俺の『技』を躱す為に
空中でクルクルと回りそのまま着地した。
こいつ…!なんて動体視力してんだ!?
サン
「いやぁ、危なかった…
まさか「雷」も使えるとはね!
油断したよ…次はもっと集中力するっ!」
サンのプレッシャーが跳ね上がる…
勘弁してくよ、これ以上まだ強くなれるのか?
こっちの見せた事のない
攻撃にまで対応出来るのか…
今まで散々自分に言い聞かせた…
勝つんだって、負けたくないって…
流石に思ってしまった。
『勝ち目が無い』…って。
ニ
「ひっ!!」
ニの悲鳴が聞こえた。
イチの『風』でひっくり返されていた。
俺はニの所へ駆け寄った。
無理だ…こいつを擁護しないといけないし
タイマンでも勝てるか分からない サンの相手か…
サン
「イチ、合わせよう。《一点集中》」
イチ
「《集風》」
サンは構えていて、微動だにしない。
イチが『風』を起こした。
その風はまるで、サンの方に俺達を
誘導するかの様な風だった。
「くっ…!おい!ニ!
地面から足を離すなよ!
気を抜いたら持っていかれる!」
なんて風だ!まるで重力が下に向いてるみたいだ…
ニ
「だ、ダメだよ!ヨンくん…もう無理だ…」
…くそっ!ホントに無理なのか?
打開策を…!俺には経験が無さすぎる…
誰か…この状況を打開出来そうな奴は!?
俺が今まで見た奴の中で…
…重力が下に……?
……いや、待て!
この方法ならいける!!
「おい!ニ!ジャンプしろ!!」
頼む、信じてくれ…!
ニ
「えー!?どうゆう事??」
俺を信じろ…!!
「いいから言われた通りしろ!
そして、今までで1番硬くなれ!気張れよ!!」
ニ
「う、うん!!」
《硬化》
俺の指示通り、ニは頭を硬くしてジャンプした。
当然。と言うべきか
ニは、イチとサンの方に『風』で飛んで行った。
俺もすぐ足を地面から離し、ニの所へ行く。
賭けだけど、やるしかない!
「いっけぇ!「武」《落蹴》」
俺がイメージしたのは…サンのかかと落とし。
この『風』のお陰で、重力が変わったかの様に
俺達側が空中で、サン達の方が地面だ。
横向きでのかかと落とし!
それを…ニの足に目掛けて放った。
『風』の強さと俺の蹴りで
ニは予想以上の速度で
イチの方に向かっていった。
イチ
「うわっ!!」
サン
「イチ!!!!」
サンは構えを解いて、イチを助けようとした。
…だろうな…お前は優しいから。
イチが危険になったら、助けようとするだろう。
弱いやつはほっとけない。
だから始まってすぐ…
止まってるニじゃなくて、俺を狙ったんだよな。
そして、お前なら恐らく
このスピードのニを止めれるだろう。
…だから先に打っといたぜ。
ニを蹴り飛ばした後に、イチの横。
お前が来る予定の場所に。
何回もイメージした、渾身の《火球》を…!
ーボオッ!ー
ードゴーン!!ー
結果は…ダブルノックアウト。
ニがイチに衝突し
俺の《火球》でサンを倒した。
ニはいてて、と言いながら
ぶつかった頭を気にしている。
抑えている所に、大きなたんこぶができていた。
俺はおかしくなって笑った。
二も釣られるように笑った。
そして2人でひとしきり笑った後、ハイタッチした。
勝ったんだ!俺達2人の力で!!
ーパチパチパチー
レイが拍手している。そりゃそうだ。
あんなにかっこよく決めたんだ。
珍しく褒めてくれてもいいんじゃないか?
レイ
「いやぁ、よくやった。お前ら2人。特にお前。
ただの雑魚だと思ってたけど、やるじゃねぇか。」
「へっ、俺は天才だからな!
次はお前を倒してやってもいいんだぜ?」
レイ
「調子に乗るなよ。
一般兵以下の雑魚が。」
…きっつ。頑張ったのに…
…ま、いっか。俺達は勝ったんだ!
あんなに分が悪かった闘いに!
なんだろう。今すごく気分が良い。
今なら誰とやっても 勝てそうな気がする。
ワイワイと騒いでいると、サンが起き上がった。
火は、俺とニが笑い合ってる時に
レイが消したみたいだ。
サン
「いやぁ、参ったよ。ヨンくん
今日は絶好調だったんだけどなぁ。」
「確かに俺だけだったらお前に負けてたかもな。
けどこれはチーム戦だからな!
こいつのおかげだよ!」
俺はニの肩に腕を回した。
ニは嬉しそうに笑っている。
喜んで良い。心の底から思ってる。
コイツが居なかったら、絶対に負けてたと思うから。
それに、よくイチの攻撃を耐えてくれていた。
…イチが起き上がった。
イチにも たんこぶができていた。
感想を言いながら、みんなで笑った。
皆強くなってる。
『能力』や『技』を知らない時と比べたら
本当に強くなった。
レイ
「諸君、ご苦労だった。
なかなか見応えのある良い試合だったぞ。
…さて、今日はここまでだ。
明日は1日、身体を休めろ。
明後日の早朝より"兵士選別試験"を行う。
心して取り掛かる様にな。」
レイの言葉に、一瞬で場が凍りついた。
ドキッとして、緊張感が走る。
そうか、いよいよ"試験"か…!
ここに来て…おっさんに拾われて
まだ5日しか経ってないのに
ずっとここに居た様な気さえする。
レイ
「試験内容は当日伝える。
無論、明日の休息や訓練は自主性に任せるが…
今までで1番ハードになるぞ。覚悟しとけ
…んじゃ、解散! 」
レイが先に帰った。
4人で顔を見合わせる。
サンが口を開いた。
サン
「みんな、ぜっったいに合格しようね!」
イチ
「うん、俺達ならいけるよ」
ニ
「ぼ、僕大丈夫かな…?」
「気にすんなって!
1人倒したじゃねぇか!
みんな、自信を持て!絶対に4人で受かるぞ!!」
…試練の先に何があるのかは知らない。
ただ、このメンツで居る事に
俺は心地良いと感じている。
…何とか、全員で。そう考えていた。
少しみんなと話して、手を振り各自の部屋へと戻る。
明日は"試験"の為に、みんなで休むって決めた。
ー次の日ー
…眠れなかった。
試験の事が気になりすぎて…
考え事ばかりしてしまう。
何も変わらないのに…
あー!ダメだ!余計な事を考えてしまう。
身体を動かそう。別に訓練しても良いって言ってたし
ー訓練所ー
俺が訓練所につくと、サンの姿があった。
「おーい、サン!」
サン
「あ!ヨンくん!」
「前から思ってたけど…呼び捨てでいいぞ?
同期なんだからさ!」
サン
「そ、そう?だったら…ヨン!
今日は休まないの?」
「お前こそ!
なんか、眠れなくてさ。」
サン
「だよね!僕もだよ!」
同じ気持ちなのが嬉しかったのか
サンは笑顔で飛び跳ねていた。
「サン、良かったら組手しないか?」
サン
「うん!やるやる!!」
明日は大事な試験の日だ。
ホントは身体を休めないといけない…
ちょっとだけ…数時間したら部屋に戻ろう。
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ーアナウンスー
「ただいまの時間をもちまして
訓練所を閉鎖致します。お疲れ様でした。」
どこからか、放送が聞こえた。
気が付いて周りを見ると
殆ど人が居なくて、日も暮れていた。
サン
「あ、結局最後まで居たね」
「あ〜…ま、いっか!楽しかったしな!」
サン
「うん!また明日ね!ヨン!」
「おう!また明日!」
サンと手を振って別れた。
…暫く歩いて、サンが振り返って
大きな声で俺に言った。
サン
「明日!ぜーったい受かろうね!!」
俺はサンの問いかけに、右手を挙げて答えた。
…明日はいよいよ"試験本番"
どんな内容でも、絶対に受かってやる!
…そして、おっさんやレイと同じ世界で
自分が何なのかを見つける。
〜あとがき〜
ここまでのご閲覧、ありがとうございました!
ここまで見てくれている方は
本当にありがとうございます。
嬉しい限りです(*^^*)
受け身では何も生まれないとは、重々承知です。
しかし、中々自分の殻を破るのは難しい( ̄∇ ̄)
私は、幼少期から『友人関係』や『親』に
十分すぎる程恵まれてきました。
『私』には、勿体ない程優しい方ばかりで
このサイトに『一緒に投稿してくれる友人』
『頑張れと、応援してくれる友人』
親には『やりたい事をすればいい』と言われました。
それを裏切りたくありません。
泣き言を言うつもりは一切ありません。
相応の評価をしてください。
本当に『面白い』と感じればでいいです。
そうでないと、成功しても心から笑えません。