第8話:「対抗戦 Ⅱ」
〜前回のあらすじ〜
主人公は無事、3日間の課題練習をクリア。
《火球》に続き、他の『技』も少し使えた。
自分自身には問題は無いが、同期のサンの様子が少しおかしい。 どうやら、調子を崩している模様。
流石に少し気になる…
課題練習の期間が終わり、遂に次のステップ。
"対抗戦"を行った。初めてのチーム戦!
結果は…大敗北だった。
…目が覚めると……白い天井…
見た事ある景色だ。また病室…
そうか…俺はサンにやられたんだった。
起き上がろうとすると、頭に酷い激痛が走った。
「ってぇ!!!」
思わず頭を抑えると、見た事無いくらい
立派なたんこぶが出来上がっていた。
サンのやつ、どんだけだよ…
ユウカ
「こら!急に動いちゃダメでしょ?」
「え? あ、ユウカ…」
ユウカ
「動かないでね 《ヒーリング》」
ユウカが俺のたんこぶに触れてそう言うと
みるみるとたんこぶが無くなっていった。
これが、10個の能力のうちの1つ『癒』か。
優しくて暖かい…ユウカらしい能力だな。
ユウカ
「はい、これで大丈夫よ。
あんまり無理しないでね?」
「あ、ありがとう…」
ユウカ
「それにしても…またここに来るなんて
もしかして、私に会いに来てくれてるの?」
「なっ!そんなわけ!」
ユウカ
「ふふっ、冗談よ」
ユウカはまた微笑んでくれた。
何だかここは安心する。
暫く、ゆっくりしようと思った時
俺は思い出した様に体を起こした。
そうだ、対抗戦。
俺がやられた後どうなった?
終わったのか…?
俺は急いで"移動盤"に向かった。
ユウカ
「ちょ、ちょっと…どこ行くの?」
「ごめん、俺、行かないと」
ユウカ
「はぁ…止めても行くんでしょうね…頑張ってね!
あと、前も言ったけど、あんまり来ないようにね?」
「は、はい。」
思わず敬語になってしまった。
ユウカさん…本当に優しいなぁ。
そんな事を考えながら『訓練所』と念じた。
レイ
「おう、戻ったか。
思ったより早かったな。」
「今は?何してるんだ?」
レイ
「お前が戻るまで各自練習だ。
面白かったぜ?バカデカたんこぶ」
この男、何度嘲れば気が済むのだろうか。
レイ
「よし、全員集合だ!」
全員が集まって扇形になった。
レイ
「今日はこれで終わりだ。
それと、サン。今日は本調子じゃないのか?」
サン
「は、はい。悪くは無いけど、完璧でもないです」
レイ
「そういう日もある。
休むのもたまには大事だぞ。
この後はゆっくりしとけ。」
サン
「はい、分かりました!」
レイ
「それから、ニ。今日のあれは何だ?」
ニ
「ひっ!す、すみません…」
レイ
「戦闘において、相手から目を逸らす。
これは死を意味すると知っておけ。
相手が素人出なければ、死んでいたのはお前だ。
そして今回だったら、お前を庇ったヨンが
お前のせいで死んでいたかもな。」
ニ
「…す、すみませんでした」
…レイの奴、意外と そうゆうの見てるんだな。
俺の事が嫌いなだけと思ったけど
ちゃんと見て評価してくれるのか…
サンにも優しいし、ダメな事はダメと言う。
実は意外と良い奴かも…?
レイ
「まぁ、俺は面白かったから、別にいいけどな!」
うん!3秒前の俺を殴りたい!やっぱコイツ嫌いだ!
レイ
「とりあえず今日は解散。
明日、またここを貸切にするから
最善の状態で明日を迎えるように。
んじゃーな。」
レイが帰って、続いてイチ、サンが『お疲れ様』と
ハイタッチしてから帰った。
ニも帰ろうとした時。俺はニを呼び止めた。
「おい、ちょっと待て。」
ニ
「な、何??」
「話がある。
明日も多分、俺とお前が組むだろうからな。」
ー次の日ー
警報音と共に、またあの機械音の声がした。
「招集。招集。至急 訓練所まで。
招集。招集。至急 訓練所まで。」
そして、何事も無かったかの様に警報はなりやんだ。
本当に雑な起こし方だな。
…昨日話、ちゃんとニは実行出来るのだろうか。
話しただけで、1度も合わせてない。
けど、簡単な事だ。多分大丈夫だろう。
さぁ、リベンジだ。待ってろサン。
俺は訓練所へ向かった。
皆もちょうど向かってる途中だったらしく
訓練所の入口で出会った。
サン
「みんな!おはよう!」
イチ
「おはよう」
ニ
「お、おはよう」
「おはよ!
サン、今日は負けねぇぞ?」
サン
「うん!僕だって負けないよ!
今日は身体が軽いんだ!」
…絶好調って事か?
おもしろい。それで良い!
レイ
「雑談は済んだか?」
レイの声がした。
どうやらずっと待っていた様子だ。
4人は慌ててレイの周りへ行った。
レイ
「んじゃ、早速始めんぞー
チーム分けは昨日と同じだ。
ルールも一緒で、誰かが気絶したら即終わりだ。
この対抗戦が終わったら
もう "試験"を受けても良い頃合だ。
後ちょっとだから、頑張れよー」
確かに、今日で4日目か…
『技』も使える様になって、実戦までしたら
もう試験には受かれるのかな?
レイ
「んじゃ、始めんぞ。
…よーし、よーいはじめ」
相変わらず元気のない掛け声だ。
だが、俺の気持ちは昂ってる。
…昨日ニの話を聞いた俺は、正直戦慄した。
イチは恐らく、自身の課題をクリアして
新しい『技』を幾つか習得している。
サンは言わずもがな。
調子を崩してるって言っても
初日で殆ど覚えていた。
俺も…何だかんだ『技』は使えた。
…問題は、ニが『技』を1つしか使えない事だ。
ニは俺達4人の中でも、格別に出来ない奴っぽい。
…とりあえず今は、できる事を活かしたい。
現状使える『技』は、身体の一部を
鋼の様に硬く出来る《硬化》だけらしい。
そして、その状態で動く事は出来ないとの事だ。
拳だけを硬くして殴ろうとしたら
拳が重すぎて失速してしまうらしい。
…基本は防御中心、囮になってもらうしかない。
とはいえ一部しか変えれない訳だから
硬くない部分を狙われたら終わりだ。
臨機応変に身体の一部を
変える事も出来ないだろう。
ニは要領が悪いから。
とりあえずは、一瞬でも相手の気を
紛らわせてくれれば良い。
ある程度耐えてくれたら、俺がどっちかを仕留める。
ニがやられるよりも早く…どっちか1人を…
さぁ、考え事は終わりだ。行こうか。
「ニ!作戦通り前に出ろ!」
ニ
「う、うん!」
ニは俺の合図と共に、中央辺りまで駆け寄った。
そして、いつでも『鋼』になれるように構えた。
正直、弱いニを囮に…
壁役にするのは気が引ける。
大丈夫だ。安心してくれ。
ー俺が必ず護るからー
さぁ、イチ、サン、どうでる?
まるで無防備なニがいたら
俺が敵なら真っ先に狙うが…
サン
「いくよ、ヨンくん!今日の僕は強いよ!
「武」《瞬足》」
そう言い残すと、サンは姿を消した?
…違う、速すぎて目が追いつかないんだ。
「ニ!教えたやつやれ!」
ニはしゃがみながら丸まって頭を差し出した。
そして《硬化》…頭を鋼に変えた。
身体という急所を極限まで隠して
頭だけを晒して固める。
狙う部分は必然的な頭だけになる。
…とはいえ、横や後ろに
回り込まれたら一溜りもないけど…
余計な事は考えないでおこう。
今はサンを捉える事に集中しろ。
何処にいる…?
俺は集中力を極限まで高めた。
ニの周りを凝視した。
俺がサンなら今何処に居て誰を狙うか。
考えろ…
一瞬だが、サンの姿を捉えた。
目線、角度、位置。
…え?俺の所に来る?
俺は咄嗟に構えをとった。
実際こっちに来たらどうするか…
考えていなかったが
すぐに動ける体制は整えておきたかった。
サン
「《正拳》」
予想通り…サンは俺に向かって襲いかかってきた。
ーブォォォン!!ー
…紙一重、辛うじて躱した。
事前に見てなかったらどうなってたか…
あと1cmでも近かったらどうなってたか…
それにこの風切り音。
本調子なのは間違いない。
この威力なら『鋼』すらも破壊出来そうだ。
俺が食らったら気絶所か、下手したら死んでしまう。
サンは切り返して、またこちらに襲いかかってきた。
「《火球》」
牽制のつもりで打った火球。
いとも簡単に躱されて、こちらに近づいて来た。
もはや違う速度を生きてる。
妥協はしてられないか…大事なのはイメージだ。
俺もサンの動きを真似る…
どう動くのかをイメージしろ。
「「武」《瞬足》」
ようやくサンの速度に追いついた…
いや、少し向こうが速い。
しかし、何とか捉えれる速さだ。
サンの驚いた顔がよく見える。
サン
「驚いたよ!
「武」が使えるんだね!」
「当たり前だ。俺は天才だぞ。」
これで、何とか攻撃を躱し続けれるだろう。
しかし、痺れを切らしたサンがニを狙ったら…
そう思って一瞬だけニを見た。
イチ
「《かまいたち》」
イチの攻撃を何とか防いでる!
ニは俺が教えた姿勢のままビクビクと震えている。
まずい…!あれじゃ
やられるのも時間の問題だ…!
俺はサンを振り払う様に加速し
ニの救出へと向かった。
〜あとがき〜
ここまでのご愛読、ありがとうございます!
どの話も、手を抜くつもりは一切ありません。
全ての話は、ここが『ピーク』
と思いながら書くつもりです。
しかし、物語の構成上
やはり気持ちが途切れる箇所は存在します。
パフォーマンスを落とさない為にも
日々のイメージを欠かさず生きていきます。