後悔
校内で流れていたあの噂。私も最初は特に信じてはいなかった。幼馴染としてなんでも知っていると思っていたから。暁斗は絶対に不良なんかじゃないと信じていたから。しかし、その気持ちは長くは続かなかった。
暁斗がお弁当を忘れたあの日。私はお母さんから届けるようにと連絡があった。丁度その日は、暁斗が部活の朝練で一緒に登校することができない日だった。会うためには、工業科棟に向かうしかない。女子も数名いるが、男子が大半を占めてるので少し怖く、不安だったがお昼休みに向かうことを決心した。
工業科棟に着くと、普通科棟とは全く違う光景に恐怖の気持ちよりも驚きの気持ちが勝った。プリントは廊下に散らかっていて、ロッカーも所々開いている。作業着姿の男子たちが騒いでいる。そんな光景に驚きを隠せなかった。
圧倒されていると、ふと、周りの人たちが私を見ていることに気づく。きっと、普通科棟から単独でくる女子が物珍しかったのだろう。恐怖、驚き、緊張と混乱しているとき、視界に暁斗らしい人が映った。
近づいて見ると暁斗で間違いなく、誰かと話しているようだった。相手はしっかりとセットされた髪にピアスをつけているという容姿の人だった。似たような容姿の人が何人か、暁斗を囲んで話している。そんな光景を見て、暁斗の噂を思い出した。
まさか。そんなはずないから。どんなに言い聞かせても鼓動は速くなるばかりだった。耐えきれなくなって私はその場から逃げ出した。走り出す前、暁斗と目が少し合ったような気がした。